日録●太田代志朗●2023年 

9月29日(金) 中秋の名月。
晴れたり曇ったり。30℃と蒸し暑い。
石原慎太郎著『「私」という男の自伝』(幻冬社)をよんだ。
稀代の作家(1932~2022)は脳梗塞や肺がんを患い、老いても体力維持にと海岸縁を散歩しスクワット励行。果敢に執筆していた。
赤裸々な執念の自伝は、死後の出版が条件だった。文学・青春・家族・ヨット・性愛・政治が迫りくる死の予感のもとにつづられている。


9月27日(水) 残暑厳しく。
晴れ、また暑さがぶり返した。
公園ウォーク50分。畔道に彼岸花が咲いている。

・さみなしにわれらあそびて人の世にまぎれかぎろひこころゆくかな
・老年を「生きた、愛した・・・」たまゆらに書きのこしゆく夕べの風よ
・絢爛の花の行方のありし日のうつゝにゆらぐ夢もねむりも


9月24日(日) 秋の空。
秋の彼岸がすぎて、そぞろ朝夕が涼しくなった。
菊、月の季節に山の色、野のさま、水の流れが映える。
小庭の植え木の手入れをするが、すぐ疲れてしまう。

昼過ぎに公園ウォーク50分。青空に白雲がまぶしい。
蝉がしきりに啼き、澤胡桃の実が転がっている。
どこか長旅にでたくもあるが、もう気力が湧かない。
浮雲、老いて遊子かなしきや。


9月20日(水) 彼岸入り。
「日本近代文学館」館報 9月15日号(NO.315)の「図書・資料受入」に、このほど寄贈した高橋和巳・高橋たか子に関する手紙・写真など43点のことが報告されている。デジタル全集の配信完結を機に、ここに収めることができた。
自分なりのフンギリでもあった。後世の研究資料の一端になれば幸いなことで、1960~1971年、波瀾のインデックスである。


9月18日(月) 敬老の日。厳しい残暑。
敬老の日で町(社会福祉協議会)よりお祝いの品をいただく。
10人に1人が80歳以上という少子高齢化社会である。
穏やかな余生を慶ぶが、奴がれを時代が気ぜわしく追い越していく。
「小人閑居して不善をなす」とつぶやきいる。

家人の人工膝関節手術は13日に無事終り、リハビリに入っている。
経過は良好で、元気に日常生活に戻られるようにと切にねがう。
ーーひとり身になり、不粋な老いぼれはあれこれ戸惑っている。
家事(食事、洗濯、掃除、小庭の水やり、戸締り、ゴミ出し)にはげむ?!


9月16日(土)
 晴時々曇、大気不安定、3連休。

澤瀉屋の激震中であるが、市川猿翁さん(83歳)が亡くなった。
”歌舞伎界の風雲児”といわれ古典派の向こうをはった宙吊りなどけれん味のある演技が話題をよび、梅原猛先生関連でスーパー歌舞伎は新橋演舞場、明治座によく見にいった。最新の演技・照明・音響を融合させスペクタルあふれた舞台は話題をよんだ。だが、その分厚い台本は口述による現代語の何とも軽いトーンでヘキエキしたのだった。

高草木光一著『鶴見俊輔 混沌の哲学』(岩波書店)読む。
”白塗りの思想”たるアカデミズムを越えた日常性を根ざす思考。
そして山尾悠子も野溝七生子ももういい。泉鏡花を徹底化するのだよ。


9月10日(日) 秋晴。猛暑、35℃。
小家の生垣の剪定、 枝折度の腐った添木(丸太)も取り替える。
また、家人が大事に育てているミニ盆栽も10鉢ほど整理。
汗いっぱいかき、シャワーを2、3回浴びる。
大相撲秋場所(両国国技館)始まる。TVは『VIVANT』(TBS系日曜劇場)も面白い。

ーー老骨の運動量は落ち、筋肉量も低下している。
体調管理に適度な運動とバランスのよい食事。おうよ、知れたことかと背筋を伸ばす。詩情ゆたかにラストラウンド。ハンニャハーラ、万物は流転する。


9月9日(土) 午後から晴れ。
台風により伊豆諸島、千葉、茨城、福島県に大雨洪水・土砂災害。
大雨で一夜明けた当地は晴れ、また残暑がぶり返す。
家人がラーメンを食べたいという。人工膝関節手術前で何かと大変なことだが、それではと近くの”天下一品”にでかける。台風一過で、街通りが人や車でにぎわっている。

9月7日(木) 台風13号接近。
晴れ。また蒸し暑くなる。台風13号、関東甲信に接近。
『宮川淳著作集』全3巻(美術評論社)を気まぐれにひらく。
シュールレアリズムを嚆矢とする1960~70年代美術、反藝術の繚乱。
ーー夕べは小庭にでるとマツムシが啼いていた。
すずやかな音色が淋しく、誰か異郷に客死せんや。


9月5日(火) 関東で猛暑復活。
早朝に目覚めて風呂に入る。朝食は鯵の開き、納豆、梅干し。
所用をすませ日中炎天下、人っ子のない城址公園ウォーク20分。
36℃、うだる暑さにギブアップ。少し息がハーハーする。

篠田節子著『静かな黄昏の国』は生きとし生ける破滅の風景がせまる。
終身介護施設にたどりついた老夫婦の終の棲家とは何だったのか。
滅びつつある近未来のニッポンの現実が浮彫りにされる。
ポストモダンやらの近代文学の終焉どころでない物語なのよ。


9月4日(月) 午後から晴れ。
関東北部は局地的に大雨で土砂災害警戒情報がでている。
当地は朝からの雨が午後には止み、日が照り暑くなる。
混乱した書室をかたづけ、アイスクリームをなめる。

日暮酒醒めて 人すでに遠く
満天の風雨 西楼をくだるーー許渾


9月2日(土) 晴天、35℃。
スカパー衛生劇場で「小津安二郎伝」見る。
皆川博子著『天涯、辺境、彗星図書館』(講談社)読む。
独自に蒐集された絢爛の名作群、敬愛する皆川ワールド。


9月1日(金) 防災の日。
9月スタート、関東大震災から100年目。
いつ起こるかわからない災害。防災リュックを取り出してみる。
昼過ぎ家人の注文の電動ベッドが届く。
リラックスしやすい態勢で、快適にすごせるようにとねがう。
ーー枝折戸のペンキ塗り、小庭とベランダの水やり。
夏に拾って押し花にした桜の枯葉を手にとるとバラバラ崩れてゆく。


 日録2010年1月~2023年9月
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