定型の詩学の断崖に

 太田代志朗、静岡県生まれ。一0代の頃、短歌結社「夢殿」(河野繁子主宰)に参加し韻文定型詩に魅了される。その後、作歌を中断し京都にて同人雑誌「対話」に参加。小説、評論を中心に演劇活動を始める。
 1987年、福島泰樹が主宰する「月光の会」に入会、精力的な作歌活動に入る。90年、第一歌集『清かなる夜叉』(弥生書房)を上梓。同年、『図書新聞』短歌時評を担当。前衛と古典の深層に分け入り、思想性と抒情を切り結ぶ幻想風の調べに、塚本邦雄をして「私に最も遠く、それゆゑに一番近い同志の一人」といわしめ、その絢爛と哀切に満ちた世界は、一説に”ネオ・ロマン派”とも称される。現代歌壇の潮流とは一線を画した孤高の境涯を閲し、近年は新作能にも意欲的に取り組み、定型の詩学の断崖に佇んでいる。

・清かなる夜叉にしあらば醒めゆきて幾千の夢にまぎれよ
・ことば引き裂かれて隠岐の雪あはれ降るらむ夜に読むヨハネ伝


『埼玉短歌事典』(埼玉歌人会)2007年3月20日

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