羽 衣


山中智恵子追悼・短歌行

(2006年11月30日張行満尾)


一掬の白魚はねて春深し


久々湊盈子
 膳をにぎわす芹や(たら=「木」偏に「怱」の異体文字)の芽 田村 雅之
匂ひ立つ霞の空にあくがれて 高橋 幸子
 漫ろに漁夫の誘はれゆく 野間亜太子
十六夜の月照る浦のさざなみや 秋・月 太田代志朗
 常世の荻のそよぐ原過ぎ 鎌田 弘子
恋しとぞ薄衣に映ゆる秋茜 秋・恋 黒岩 康
 迦陵頻伽のこゑはるかなり 日下 淳
冬凪の浜辺より得し宝もの 松井 春満
 天女の五衰見えてあさまし 野間亜太子
花筏浮かべて入りぬ夢の庭 田村 雅之
 朧夜なれば紛れて行かむ 久々湊盈子
春風に乗りて舞はむに羽もなし 高橋 幸子
 はらりまよえどいざかえそうぞ 深海 あきこ
埒さえやまた喜びの羅(うすもの) 鎌田 弘子
 智恵子の愛せし<御統(みすまる)すまる> 黒岩 康
はろばろと恋へば秋麗身に響き 久津 晃
 疑ひの露しとど濡れつつ 山埜井喜美枝
月光つきかげに東遊びの駿河歌 秋・月 太田代志朗
 失せし言葉の行方たづねむ 天野 律子
寒梅を見ずや見ざるや籠に秘め 米満 英男
 偽りもなくのぼる雲の間 日下 淳
樹々伝ふ残り香ゆかし花吹雪  春・花 松井 春満
 施し給ふ黄金降る春 挙句 野間亜太子

野間亜太子主宰『フーガ』31号(2006年6月1日)

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