古流地歌に活躍の川口慧耀さん
ーー5月21日、三船祭の御座船に地歌船を


5月21日、三船祭は、翠緑滴る嵐山大堰川に繰り広げられる。

大堰川(おおいかわ)での御船遊は、昌泰元年(898)長月21日に、宇多上皇の嵐山への御幸に際し、行われたのに始まると伝えられている。「三船祭」の名前の由来は、白川天皇が行幸の折に、「和歌」「漢詩」「奏楽」に長じたものを3隻の舟に乗せて御舟遊びをされたといわれていることから「三船」とされている。

祭の中で奉納行事の一つとして行われる扇流しの行事は、昔、足利将軍が嵐山近くの天龍寺へ参詣の際、お供の童子が扇を誤って川に落したところ、扇が川面 を流れる優美な様に将軍が大層喜ばれたことから、以後天龍寺参詣の度毎にお供の人々が競って扇を川に流したという故事に拠っている。

三船祭には御座船を先頭に20数隻の船が、嵐山や渡月橋上流で優雅な様をみせてくれる。その御座船の供奉船として「地歌船」が出る。

これは古流地歌保存會によるもので、当会は、古典地歌の傳承・保存及び、後世の担い手となる師範の養成に務め、名取式・免状授与は、車折神社にある芸能神社の拝殿にて執り行っている由縁である。奉納地歌演奏は、船中にて午後3時頃行われる。

古流地歌保存会の川口慧耀さんに会ったのは昨年の秋のことだった。
京都でのある賑々しいパーティの席であったが、川口さんは薄色のスーツでいつも明るく微笑んでいられた。そこには厳しい芸道に励み、古流地歌への情熱を秘めた方ならではの華やぎがあった。

そのCD『松の葉』所収差身先社も先三線組曲と吾妻浄瑠璃選集」は何度も聞いた。

三絃組歌秘曲七傳「堺」は、小歌本来の歌詞や曲節など古来、大秘事で慧耀さんが歌い上げている。地歌の“歌”は、その時代、生きた人間の感情を細やかに表現し、奥ゆかしくかけた言葉で作られている。

現代消滅寸前にある古典地歌「三絃組歌」の独奏会を主催するなど活躍中の川口慧耀さんは、
「古典は自己を徹底的に無にして音の流れを再現するもの、<静の自己表現>だと思います。無から生ずる有、すなわち自己を無にしたところから生まれる音の流れは、人の魂に響くものとなるのではないでしょうか」
という。そこにはなみなみならぬ力がみなぎっている。


御座船で演奏する慧耀さんは、嵐山の光と風の中でより輝いているのだろう。



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