青嵐駆けついけゆかむ

ーー高橋和巳没後35年に



鎌倉の風の夕べになだれたる邪宗の門は閉ざされゐしを

青嵐駆けつけゆかむ屈せんとすれどかなしきわれの五月よ

いまだなほ迷へる日々に悲の器酌みてうたへば叫び乱れむ

ここ過ぎてこととひゆけばはつなつの風の汨羅にさまよひたるを

わが業(ごう)は終わり朝(あした)に生きむとぞあはれ頷くきみがほほゑみ

老いざらめ青葉若葉よささやけよ遥かなる美の国の初夏(はつなつ)

雑文は書くないいか長編に取り組め春の京の夢はも

その夜に酔ひてうたへば網走の番外地なる姓は高橋

拠るべきは己れの思想(こころ)あかときの風に告げたる蒼き怒りを

こころざしなどて瞼は重たきを黄昏の橋わたりてゆかむ


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