日録●太田代志朗●2020年

11月28日(土)  ミミズク土偶。
晴れて空が青いが、北風がビュービュー吹く。
昼前の公園をウォーキング60分、木々が轟轟と鳴っている。

近くの国指定史跡の真福寺貝塚で「ミミズク土偶」が出土したという。
ミミズク土偶は縄文後期以降につくられ、関東南部での発見が多く幅10.5センチ、長さ13センチ、表と裏に赤い顔料のあとがあり、保存状態は良好。約3.000年前の地層から出土、顔の表現などから重文の土偶より新しいといわれる。
現地見学会には行かなかったが、たまたま40年余棲んでいる一帯が、縄文のまつろう精霊の地であることは感慨深い。


11月27日(金)  曇り。午後より冷え込む。
朝8時半にM病院・耳鼻咽喉科、本日は何と僅か20分待ちで1番の診察。
区内唯一の大病院はいつも混みあい3時間前後待たされてふつうだったのだが、耳クリーナーに点鼻薬、プランルカストカプセルなど2カ月分。

東京で過去最多の570人、大阪、名古屋、札幌も深刻で医療体制が「全国で崩壊危機」と。
GOTOなど関わりしらずも、危機感をもって静かに過ごす。
午後より冷え込み、原稿1本をプリントアウト。シュークリームを持って炬燵。


11月24日(火) 曇天。時雨。
川村湊著『新型コロナウィルス人災記ーーパンデミックの31日間』(現代書館2020年5月28日発行)。
緊急事態宣言の2020年4月7日~2020年5月7日まで、「どこまで我々を苦しめるのか」とリアルな生活感がにじむ。
もともと天災に他ならなかったが、それを失策によりパンデミックになる政権の対応のまずさがあきらかにされる。重篤な病いとなって死んでゆく人が何人もでている。第3波襲来におののきながらを生きる身のあやうさを改めて思いしらされる。
札幌在住の川村さん、透析など療養で大変でせうが、御身お大事になさってください。

季節が微妙に移っていく。只今、老生は索漠ながらも運(めぐ)のままに生きる。
コロナにやられたくない。無策の国家に、生産性が低いと高齢者が清算されてたまるか。


11月23日(月) 勤労感謝の日。
晴れて風あり。雑木林が揺れ、紅葉がにじんでいる。
木立の中に入っていくと、ほっこらした気分になる。

不安の3連休ーー感染者急増、GOTOトラベル、第三波警戒。
年寄りにも一日一日が重く、力がしっくりこもらない。
武州の日の暮れは早く、急に冷え込んでくる。
尾崎真理子著『大江健三郎全小説全解説』(講談社)
分厚い500ページ余の本を少し読む。


11月22日(日) 大相撲、貴景勝が優勝。
晴れ。昼下がりの公園ウォーキング60分。
感染拡大の中、自粛も何のその京都も賑わっているようだ。

大相撲11月場所千秋楽、貴景勝が優勝。小結 照ノ富士との優勝決定戦を制する。
断然、相撲が面白い。毎夕一杯やりながらのTV観戦なり。
また、昨夜のNHKスペシャル「三島由紀夫 50年目の“青年論”」。
「知られざる素顔に迫る」ということで、期待していたんだがね。


11月20日(金) 曇り後晴れ。
枯葉が家の前にいっぱい散らばっている。
いったん掃いたが、まだ風に寄せられてくる。
明日から3連休警戒、全国の感染2400人超、過去最多。

古井由吉著『われもまた天に』(新潮社)は「雛の春」「われもまた天に」「雨あがりの出立」「遺稿」の4篇。晩年の入退院、遅い春や大粒の雨。平穏の中の残虐、脱構築の文体ーー先祖におこった厄災をわが身に負いながら、静かにほぐれてゆく日々。
あわせて富岡幸一郎著『古井由吉論ーー文学の衝撃力』(アーツアンドクラフツ)読む。


11月19日(木) 三島由紀夫没後50年。
三島由紀夫没後50年である。
文藝雑誌の特集や作家論がだされ、TVでもとりあげられ賑っている。
その文学から楯の会自衛隊急襲、割腹自裁へと時代はかけめぐった。
美と頽廃の世界から士道めぐる論争まで、それら一つ一つに目が離せなかった。
わが内なる三島由紀夫は『金閣寺』から始まるーー三島由紀夫小論

今、卓上に近刊一冊の全対話の文庫をひろげる。
『豊饒の海』を「冗漫で、文体がだらけて、退屈な小説ですよ」と喝破。
三島由紀夫はその貧弱な肉体で、バーチャルにて虚妄、作家としての衰弱の証拠だったというか。
辣然毛髪を立たしむ。年々、往時を追懐するのみ。


11月18日(水) 晴天。風なく温かい。
無観客でのマスターズが終わり、ダステン・ジョンソンが通算20アンダーで優勝した。
かのT・ウッズにして、最終日のオーガスタナショナルGC(米国ジョージア州)アーメンコーナの12番パー3を、何と8オン2パットの10打。風の読みの困難が思わぬことになった。

ゴルフ下手の老骨ながら足腰はまだ自由にきき、年齢と時が新たな喜びをもたらしてくれる。
夏坂健はじめ、佐野洋、生島治郎、高橋三千綱氏らのゴルフエッセイが面白い。
療養から回復した伊集院静氏の魅惑のゴルフ論も、気合がはいってはげまされる。
「300ヤードのティショットを打つ若者と、150ヤードしか飛ばなくとも正確なショットが打てるゴルファーが互角、それ以上に戦えることが、ゴルフの奥の深さなのだろう」(「夢のゴルフコースへ」)という。I shall returnI クラブを磨く。


11月17日(火) 皆川博子さん、お元気で。
『皆川博子随筆精華 書物の森を旅して』(河出書房新社:2020年9月30日初版)は、偏愛と美学に満ちた全エッセイ集。就中、「美少年十選」(「日本経済新聞」連載)は絵画、彫刻、美術に詩や戯曲をあつかっている。
伊藤彦蔵「初陣」(弥生美術館蔵)には、「散る花びらが馬蹄にかけられるのを惜しみ、ふと駒をとめ、軍扇に受ける若武者は、死を賭しての戦さにおもむく途次と思われる」とあり、この冒頭には、太田代志朗の一首。
・薄化粧したる敦盛愛(かな)しさの透きてたゆたう歌のひとふしーー拙歌集『清かなる夜叉』

同引用には他に西條八十、ロートレアモン、大手拓次、多田智満子、薄田泣菫らあり。
その砌、美と頽廃のミステリー、皆川さんとは二、三のゆききがあったきりである。


11月16日(月) 坂田藤十郎逝去。
坂田藤十郎(88歳)が11月12日、老衰で亡くなった。
優美で情のこもった上方和事、そのはんなりした風情は絶妙で、曽根崎心中のお初が忘れられない。思えば、近松座公演の扇雀は国立劇場や岩波ホールでよく見た。
おりしも国立劇場で舞の会。関西座敷舞の妙で、京のお姐さん方が駆けつける。
四世井上八千代の京舞は艶やかにも地の座った静かな舞いだった。
お濠の常盤松の映えるロビーは何とも華やかにつつまれることだろう。
ーー幼く能楽師くづれの叔父と芝居帰りにさまざま話したことが思いだされる。

この世の名残り 夜も名残り
死にゆく身をたとふれば
あだしが原の道の霜、
一足づつに消えてゆく
夢の夢こそあはれなれ ーー『曽根崎心中』


11月14日(土) 晴れ。日中12℃と温かい。コロナ感染急増。
晴れわたる穏やかな晩秋。小庵の落ち葉を掃き、水をうつ。
コロナ感染急増で14日東京352人、大阪285人、北海道285人、埼玉104人。
世界全体で5347.9万人感染、 米国1日としては最多の18万人と。
ーー大相撲十一月場所をTV観戦しながら、加賀の駅弁の柿の葉ずし。


11月12日(木) JGM宇都宮ゴルフクラブで。
晴れ。スッキリした青空がひろがる絶好日和。
ジャック・ニクラウス設計の6.360Y、P72。
INを9:55スタート。ゆったり体幹を整える。
シャローで振り切るが、相変わらず距離がでない。
普段のキャリアも経験もものかわ、自然を生かした戦略性が高いコースだ。

グリーンは広くも速めで難儀。微妙なアンジュレーションに苦しむ。何んて難しいんだ。せっかくのAUT3番の162ヤード1オンを、4つたたいてしまう。

それでもボールを追って無心に歩く。
手ごわいコースに、失望したり喜んだり。スコアは97(46:51)。
紅葉が映え、日の傾きもはやくなる。山影が急に冷え込む。
EGA例会メンバー(森脇、丸野、中西、太田)の楽しい1日だった。


11月10日(火) 晴れ。秋が深まる。
スマホ(ドコモGALAXY)は専ら家族との連絡が主に使っている。
デジタル化の波の中、リモート、ダウンロード、キャッシュレスだとか。電子決済でポイント、QRコードとか。老輩は呑気にその恩恵にあずかることなく過ごしている。
また、Outlook AMAZONから支払い情報更新せよという。さらに、使用していない某Sカードより、以下にアクセスしカ-ド利用確認せよとの先月来の怪しいメールに悶々。


11月9日(月) 晴れ。風あり。
朝の公園ウォーキング70分。風があり、雑木林が騒ぐ。
図書館でオンライン検索・予約で借り出すのも便利になった。
曽野綾子著『夫の後始末』(講談社)は、文壇きってのおしどり夫婦、63年連れ添った仲である。91歳の夫の認知症が始まり介護から入院、そして死をみとる日々の暮らし。
信頼関係があればの最期の情景に思わず目頭がうるむ。
BSフジLIVEプライムニュースは橋本徹、先崎彰容の丁々発止が面白かった。

11月8日(日) 静かな晩秋。
晴れ。風なく静かに晩秋が深まる。
公園にゆくと、枯葉に山茶花の落花の紅がしみいるようにひろがっている。

熱狂の米大統領選は、「分断から結束へ」とバイデン氏勝利宣言。
つづくTV中継に、厳かな皇居・松の間より立皇嗣宣明の議。
北海道で4日連続100人超、 感染拡大止まらず。


11月6日(金) 曇天。
風なく雲におおわれ、朝のウォーキング60分。
明日は立冬、紅葉の時節だが暦ではもう冬の到来である。

怠け心もさりながらどこへも行かず、ひそっりした時間が流れる。
移動書架の間においた炬燵に入り、片端から本を読む至福。
わけても山田稔のエッセイーー日常の確かな眼差しがびんびん伝わってくる。
富士正晴、鶴見俊輔、松田道雄、多田道太郎、天野忠ーー映画、万年筆、散歩道。
そう、年とれば風邪をひかぬこと、転ばぬこと、義理を守らぬことの三つや。


11月4日(水) 晴天。朝は10℃と冷え込む。
夕べは風の音に起こされたが、東京で木枯らし1号。
秋草が陽に眩しく映え、ウォーキング60分。
小庵の夏椿が赤や黄色に染まり、枯葉がいっぱい落ちる。

・少年の夢いづくにかぬばたまの母の扇を焼きぬ日昏れは
・断崖をつきおとされし血まみれのめざめの朝に雪ふりしきる
・何もなく過去だけの町さらばとよ愛(かな)しく風に夕べ語らや


11月2日(月) 日が暮れ、雨になる。
寒くなり、蒸し寿司の美味しい時期。
100円ショップで来年の運勢暦とカレンダーを買い、ポスト投函3通。
S接骨院で予約マッサージ1時間。5時前に日が暮れ、雨になる。

たまたま宮本徳蔵の『銀狐抄』や『たべもの帖』を一気に読む。
吉野や京の鯖酢(鮨)を、一本お燗して粋にやりたくなる。


11月1日(日) 霜月。コロナ、冬に不安の兆し。
はや霜月、今年もあと2カ月になった。
早朝起床が億劫で、ウォーキングは昼前が多くなった。
当地の紅葉も深まり、城址公園は風なく静まりかえっている。
武州小城下に40年余、つましい暮らしがつづく。

老骨がきしむが食事もしっかりとり、溜まるウツを祓う。
身体機能や認知機能は落ちるが、仲間とJGM宇都宮、皐月佐野コース、野田けやきを年内予定。
さて、著作集プランは一向すすまずも、PCに向かいWORD、縦書き、12P、MS明朝。

日録2010年1月~2020年10月
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