再び、高橋文学とは何だったのかったのか

 『高橋和巳全集』(河出書房新社)全20巻――原稿枚数は概算20万枚となる。このうち小説は10巻、評論4巻、中国文学2巻、翻訳1巻となっている。
まさに生涯原稿20万枚というのは、異例の多産作家を任じてあまりある。

 若く研究を重ね学者の道にすすみながら、「小説家」になることを何よりの夢としていた高橋和巳にとって、立命館大学講師時代、「悲の器」文藝賞受賞で文壇デビューを果たし、二足の草鞋をはくことに見切りをつけ念願の東京に出たものの、再び母校に呼び返され京都に戻ったことが大きな運命の転機となった。

 “戦後文学”を真っ向から継承する高橋文学は、わけてもその小説は無骨頑迷そのものであり、観念的著述が多い。多岐にわたる評論分野は高く評価しても、小説に関してはどうもいただけないという見方が多い。

 そして、その高橋和巳が抱えた日本的心情に直結したラディカリズムも、最早何一つ顧みられなくなってしまった。
だが、私は、やはり、高橋文学の一つの鍵としては、そのどす黒く渦巻く心情であり、それにともなっていいようもなくただよう哀愁の影だと思っている。

【2005年12月20】

▲INDEX▲