高橋文学とは何だったのか 


 インターネット社会は情報氾濫の中で即効性、簡便性に加え、雪崩を打ってデジタル時代に突き進んでいる。何事もその場限りの風潮に、静かに立ち止まることもないまま、「言葉」は淡白に薄らぎ、「文学」が遠ざかってゆく。

 高橋和巳は、最早、顧みられなくなり、昭和文学史の一点の小さな明りになっている。さもありなん、その「現実に対する認識方法」「内省の仕方」「一切の価値判断の根底にある価値座標の提示」といった長編小説が内包していた機能も、時代の流れの中では古色蒼然となってしまっている。

 ここから何を引き出し、裂き切ってゆくか。
さりとて小説、評論、エッセー、研究という高橋文学のそれら相補的な、あるいは地続きの壮大な世界。
だが、全集20巻を丹念に読み返す時間も、すでに私にはない。

 来年は没後35周年。
 歳末、「高橋和巳序説」200枚の原稿に向かい、日本ペンクラブ電子文藝館に送信すべく整理中である。


【2005年12月15日】


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