菊開月ーー1日1首
(平成17年9月)

1日 渋谷BUNKAMURAでG・モロー展。
迷宮のサロメに会ひて一期なるゆめ研ぎはてよ夏の終わりに

2日
紅葉のいづこに散りて後朝(きぬぎぬ)のわかれ不覚にあふれやまざる

3日 朝、いつもの愛犬との公園散歩。
わが菊開月愛するにおそらくは滅びつつあり国を愛すか

4日 雨の川越にて連句会。      
夜の雨の街行くバスに飛び乗りて闇にまぎれむ重き掌(て)を見る 

5日 沖縄に台風発生。
秋蛍ゆくへ知れずも謀られて死後こそあかねさす雨中の契り

6日 NHK-BSに成瀬巳喜男監督『妻』(上原謙、原節子)見る。
流れゆく日々の哀しき日暮れかな妻にてあらば微笑(ほほえみ)うかべ

7日 白露。台風九州から日本海へーー期日前投票に行く。
豪雨なる区役所にあざやかに駆け書きつけきたる期日前投票

8日 成瀬映画『歌行燈』(花柳章太郎、山田五十鈴ら)見る。
門付けの男なりてもこの舞に打ち込む明日の恋の松原

9日 重陽。井上ひさし作『小林一茶』(こまつ座公演)
いづくへか一座に興じ恋ひわたる男哀しく黒きてのひら

10日 体育館でインディアカ練習、汗だく。
軽やかに運動靴はき走りけるまだ健やかなわれにてありき

11日 衆院選挙。立命校友会幹事会。
校友(とも)とまた京の宴のひとときに風立つ秋の夕べとなりぬ

12日 上弦。秋晴。自民圧勝のサプライス政治始まる。
高らかに笑ふテレビにマドンナや刺客騒げる衆愚政治は

13日 何か哀しい夢に逐われ。
秋蝶の舞ひにし夕べ母と姑(をば)琴弾きあそぶ遠き夢はも

14日 右目が結膜下出血。
寝不足か右目出血 昏々(くらぐら)とうつつなびかせわがゆきなずみ

15日 
小人閑居して何を為す露霜の100円ショップにサングラス購ひ

16日 十三夜。
物思へば憂しとて浮きぬ一日を過ごしあはれにわが十三夜

9月17日 能『大原御幸』(第6回能楽観世座公演=友枝昭世、梅若六郎)
大原の里のゆふべにまた誦(よ)みぬ南無とよわれの夢の夢なる

9月18日 中秋の名月。
名月をふり放(さ)け見つつうたひしを川辺の城下(まち)真幸くあれば

9月19日 昨夜満開の月下美人萎えて。
さらば一夜の花なれば愛(うつく)しみ月に語りて遊びけむとよ

9月20日 
秋雨の夕べになりてこととへば般若のことぞ血もて語らな

9月21日 曇。
彼岸過ぎ夕べの城下(まち)の暮れゆきてわが死ののちの鐘はひびくや

9月22日 朝、小雨。
歌亡びいな風萎へて謀られし不覚の夜の静かなる地震(なゐ)

9月23日 秋分の日
紫檀塗螺鈿金銅装舎利輦(したんぬりらでんこんどうそうしゃりれん)、おお祈りてよ秋のことぶれ

9月24日 台風17号、伊豆諸島に発生と。
血圧のいささか高き憂し午後の雨に濡れ咲く彼岸花かな

9月25日 木村一信氏(立命大教授)に会う。
南方徴用作家論、あかときのその銃声に目覚めたるはや

9月26日 秋日和の1日。
憂愁禁じがたければ一日を風の流れにしばし瞬き

9月27日
この国の空飛び行きて悲しけれまぶた覆えよ蒼きかりがね

9月29日 秋晴のイトーピア栃木GCで好プレー。
秋晴れのナイスショットにコスモスの揺れゐる午後のベストを希ふ

9月30日
あれこれと雑事にまぎれ不快なる一日を終え愛犬(いぬ)と散歩す


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