やさしく笑みて

安寿鎮魂歌 2018年秋



 
  2018年10月10日早暁、安寿死す。
  夜半、声をたて、水を何回も飲んだ。
  鎮かに旅立っていった・・・・。

 
2004年3月生まれの15歳ーー共に暮らした喜びの日々だった


・安寿死す早暁花に告げざればあはれいづくに風立ちにけり

・冷たきを抱きて山茶花咲きそむる秋の朝(あした)に崩れおりしを

・しずかなれおおこの夜明けひとしれず哭きにしものを赦せ安寿よ

・神無月きみがさやけきけふもかもわれら家族(うから)の夢の日々なれ

・ドウシタンダ、オイ、ドウシタンダーーヒトリシテ静ニ逝ッタアワレ安寿ヨ

・この遊星(ほし)の鎮かなはてに鐘鳴りぬ哭くなお前を抱きし夕暮

・幸ワセイッパイ生キマシタワワタシフリソソグ日々羞シキアナタ

・苦しかっただろう最期の水を飲み見上げみつめし夜明けのわかれ

・このいのち十五ねんなれいとしきをわれらうたひてはぎのかぜふく

・旅立ちてお前がいない何をすることもなき秋のあわれ日の暮れ

・いま一度抱きしめてやろうこんしんのこの掌(て)でつよくいのちのかぎり

・サザンカの咲きにし道をたずねゆきかなしくあれば一日過ぎる

・ともにゐた日々よろこびの森駈けぬ永遠(とわ)なれわれら頬すりあわせ

・きみ死にて降りそそぐ秋いはなくに思へば夕べしぐれたりしか

・ツワブキの小庭(にわ)にたたずみ不在なる時のめぐりに泪しておる

・秋のヴィオロンなど聞こえずゆくえなくひとりさやぎぬゆめのきりぎし

・今朝モマタオ前ト遊ンダ公園ニキテ泣イテイルサハレ老イボレ

・お前のいなくなった道、河畔、風、薔薇さみなしにうたひゆくかな

・わがアンはやさしく笑みて駈けゆけり語らな朝(あした)カサブランカに



 



  アンが逝き、早11月ーーポッカリ心に穴が明き、つらく、淋しい。
  それでも、「アン、さあl行くぞ」 いつものように呼びかけて家を出る。
  風、光、小道、公園、噴水、流れる雲ーー時が巡る。

・今朝もまた「さあ、アン、行くぞ」いとしみの言葉よ愛よ老いぼれひとり

・小城下の雨にうたれて一日をさがしめぐれば流謫(るたく)びとなれ

・薄明にゆめにうつつにさけびたりゆきて愛(かな)しきわれの霜月

・残花添え風のねむるをひとときのゆえしらなくにゆれゆれおりぬ

・お前の赤きリード未だ手放せず駈けゆくゆめの赤き小路よ

・今一度一緒にゆきたい抱きしめたいみつめいとしきおおわがアンよ

 ーー11月22日、小雪

・今一度抱きしめゆかむ耐えにしをアンの行方にさけびくづるる

・晩秋の朝風うけて目を瞑るアンよお前はどこにいるのだ

・「モウ、ワタシ、歩ケナイノヨ」、ナレバトテカートに乗セテワレラ行ユキシヤ

・所在なく風に吹かれておったのだーー11月23日午後の公園

・枯葉散るウォーキング1時間日が暮れてその他何もなきわれの一日

 ーー12月8日、事故で修繕中のAQUAが1カ月ぶりで戻る。
    いつも安寿と一緒にでかけていた車に乗って。


・われらまた陽のふりそそぐ1日を過ごしてゆかな遊星(ほし)の彼方に

・こんなにもさみしくなった夕暮れをおまえのいないAQUAに乗って

・1年半の走行距離7.500km 安寿とわれの日々の証しに


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