哀しみのパトスーーさはれ五月に

●30日、北奥耕一郎写真展『大地』(東京)、そして歓迎会。
大地かがやき雲流れ日暮れとなりて叫びおりたる
たたずめば悲しき歌のいずこなる風の果てなる黒き十字架
逆光の森駆けくれば美しき映像(かたち)に冴えるレンズなるかも
その夕べ華やぐ都会(まち)に会ひしかばしずかに微笑(わら)へ京の貴公子
上洛を果たさずこころざしさはれ今宵の宴に酔ひて候
京艶の光まぶしき陽の中にちりばめたれば夢をひととき
問ひゆきて光と影のひたぶるに北奥耕一郎の熱きしらべよ

●やすいゆたか著『評伝 梅原猛ーー哀しみのパトス』(ミネルヴァ書房)
哀しみのパトスよ風よとこしへえに罪ある身をば研ぎて発ちたる
ぬばたまの闇にゆらめく面影の花散る里の夭(わか)き母なれ
その哀しみゆへに待ちゐたる歌にとりすがり泣く夕べの少年
また何を叫び喚(おら)びてこの初夏(なつ)をいだきうつむく風のごとくに
その夕べ母に似たりし女(ひと)ゆへにふと泪する遠き夢はも

大いなる生命の循環と共生ーー森の翠のしたたれ夏よ
水底の歌よ流竄の日々なるも暗黒(やみ)にさまよひ叫びて皇子(みこ)
神々よ飛鳥よ風よ逐はれなば流刑のかたに立ちて眠れよ
<怨霊>の黒きエトスに血塗られし古代(とき)の悲劇(ドラマ)のわれの朝焼け
春ゆふべ地獄の思想もて京の大路に裂けし若き詩魂は
隠された十字架なれば前(さき)の世の誰(た)が夢に告ぐ花は散りなむ
評伝を書きしやすいゆたかなれゆきあひたれば紅蓮のパトス

●24日、松岡達宜歌集『青空』の出版を祝う会(銀座ライオン)
父上のボストンバッグ持ちくれば泪浮かべて君は語りぬ
さらばまた無頼の日々よたたかひの悲しき夢にまぎれゆかむか
青空に投げたる帽子いずくにや酒浴びきたる時の流れに

●22日、那須チサンカントリーで。
風流れ花咲き乱れ往く初夏(なつ)の那須山麓のコースに挑み

●20日、早朝の窓を明ける、眩しい光がいっぱい。
朝の窓明ければまぶしき光(ひ)にみちて天(あめ)なる日々やあはれ五月は
拒むものなき空にたとへば愛の洋傘させよつひに堕ちても

●愛犬とゆく城址公園に花咲き乱れ。
緑なす日々の笑(ゑま)ひて過ぎゆけば風の五月の還りきたるを
朝な朝(さ)な風の薫りてつれもなき身をながらひぬ城下の町に
人形の街の日暮れの灯りかな花簪の揺れる小路は

●15日、反日暴動たかまる。
天地(あまつち)の朝(あした)にあらばみ雪降れさぶしき国を千たびおもひて
憎しみの明日に何も解けずひそやかに抱かるわれの五月雨

●村上龍『半島を出でよ』(冬幻社)読む。
亡国の悲しみなりてうたひたるイージス艦は未明炎上
滅びゆく世界とあらば銃撃すいまひとたびの決意とあらば
占領されたるか封鎖されたるか 突撃開始せよ若きコマンド
半島を出でよあかときくるめきて風のゆくへの国のまほろば
この国を守らば若き夢ありて戦闘(いくさ)の果てにそよぎたちしや
おれの世界ゆにおれが壊すーー闇に走りてゆけば口の渇くも

●3日、和巳忌ーー青嵐吹きて。
青嵐吹きて邪宗の門きしみ浴びたる酒のかなしき夕べ
黄昏の橋さへ淡くかすみたれ情(こころ)の初夏(なつ)に問ひてあゆむを
和巳さん、ながらへおれば悲しみの器に酌むも酒の濁れば
憂愁と孤立のまぶたやわらかくまた狂はんとする闇にまぎれよ
渺茫の荒野にたてばはためくをさらば永遠(とは)なる同志に告げむ



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