賦山何連歌
 駿河台世吉 

【2002年5月3日 於:東京・山の上ホテル】




連衆

久々湊盈子
鎌田  弘子
深海あきこ
野間亜太子
高橋  幸子
太田代志朗
前川  斎子
田村  雅之
黒岩   康
山中智恵子




■初折(表)
遠雲のおぼろに見えてゆく水や  盈子
 今日新しき園の万緑 弘子
あたたかや昼から月のかかりきて  あきこ
 電車の子等に初(そ)むるうたたね 亜太子
椅子深くかけてことばの湧くを待つ 幸子
 いかに秋とはさやけさ連れむ 代志朗
祭り笛ついに消え入る猫の影 斎子
 撓垂る滋賀に野分の立てり 雅之

■初折(裏)
きらきらとステンドグラス夜となりぬ 智恵子
 トバルカインの打つ槌の音
手摺れせし塩瀬の帯の締め具合 盈子
 絵の具の黄色筆あたらしく 弘子
濃淡のあはひゆらして雨の降る あきこ
 扇をさして舞ふ京踊り 亜太子
きはやかに素足に締める月の影 幸子
 薄暑の頃に華やぎ還る 代志朗
旅仕度うはの空にて運びけり 斎子
 ひとに逢はなむ夕ぐれの海 智恵子
業平はたねさし相模を思ひ見ず 雅之
 ゆりかもめ飛ぶ下町の辺(へ)
花冷えの手をすり合はせ寝(いね)むとす 盈子
 春のひととき丹青措きて 弘子

■名残の折(表)
フレディは里のなかなる楓の芽 亜太子
 G線上下はみだす音符 あきこ
矢を放て急げ上洛つややかに 代志朗
 しばしよ憩へ馬の背の汗 幸子
アルニカを干して商ふ薬師(くすし)あり 雅之
 砂漠の嵐にゆくてはばまる 斎子
朝焼けを踏みて鼎(かなえ)は目を射られ
 かたきはいづこよくひきて肩 智恵子
重くるしき代に育ちたる時の技(わざ) 弘子
 然かさりながらわがこころざし 盈子
ベルジャールよ「少年王」よ群れて飛べ 亜太子
 雁がねの列(つら)見えて揺曳(やうえい) あきこ
十六夜の月にうそぶく歌なれば 代志朗
 かはたれどきを髯のつゆしも 幸子

■名残の折(裏)
草莽の精神(こころ)などは打ち捨てて 雅之
 北の大地に流氷とどく 斎子
身を削ぐや軒を渡れる風迅き
 いつしかきみに別れきにけり 智恵子
夜をこめておのれに帰る詩の仕事 弘子
 背に負ふ夢の広やかなりし  亜太子
南北の果てまでのびて花の村 あきこ
 うららにほめく心ばえはや 智恵子

野間亜太子編集『フーガ』第30号(2002年6月)より

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