『小松左京マガジン』第17巻で高橋和巳を語る

 高橋和巳没後25周年の編集企画に協力する中で、或る事情があって難航し、一日、小松左京さんと帝国ホテルでお会いしました。
 1991年、桜花爛漫の春の宵のことで、小松さんはその理解を示されました。
 そして、発行された梅原猛・小松左京編『高橋和巳の文学とその時代』(阿部出版)は、新聞・雑誌などで取り上げられそれなりの話題を投じたのでした。

 思えば、『わが解体』を絶望的な病床で書き上げた高橋和巳の「三度目の敗北」に盟友小松左京は応えず、またその入院時や葬儀告別式も東京勢で行われたかたちで、小松さんは頑なにまで沈黙していたのですね。

 でも、小松さんの中において、あの髪振り乱した憂鬱な高橋和巳が、今では呵呵大笑して夢に現れるということでした。
 小松さんの『「笑う高橋」と「もう一人の高橋」』(「高橋和巳の文学とその時代」所収)の「笑う高橋」には、<祭り>の思い出の中に光り輝く30代の若々しい高橋和巳の笑い、軽やかさ、身振りの大きさが熱く語られているのが、何よりも私には印象的でした。
 そして、「もう一人の高橋」とは、小松さんら第一次『対話』(同人雑誌)メンバーには預かり知らぬ、また”有象無象の高橋文学ファン”には関わりのない、それこそ浅学非才なる私共の慄然たる存念の問題でありましょう。

 『小松左京マガジン』は年4回発行の個人雑誌です。
 このたび、同誌「自作を語る」コーナーで小松さんは自らに課した長い沈黙を解禁し、高橋和巳を取り上げられるとの由です(来春発行・第17巻)。

 回想の彼方に閉ざした重たい扉が開かれようとしているのです。
 ここに無上に明るい哄笑の晴々した高橋和巳が甦り、その涙と苦悩を共有した<祭り>が鮮烈に展開されることでしょう。

 『小松左京マガジン』を心して待っている次第です。

 【2004年12月16日】

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