初冬の芦野の湯に(11・20)


●芦野温泉は那須の治癒の湯治場としてしられる。
 この持病、疾患にきくという奇跡の温泉を信じて私は一心に湯治に励んだ。
 捻挫、膝・腰痛、それに自律神経がやられている日々だった。

「心許(こころもと)なき日かず重なる」奥のほそみちなればあはれ芦野湯
ちりぬるをわかよたれそとくちずさむ汗したたらす夜の熱き湯
あかときの湯の香りわれ生(あ)れし日の紺の空かがやくかなしみに耐へ
持病疾患治りたれ初霜のかりそめの薬湯(ゆ)にほほゑみてゐる
薬湯にひたり傷みし足膝よ芦野の月にうそぶきたるか
夜の湯に揺れる肉叢(ししむら)淡くしてふと見上げれば月いでしかも
芦野の香ひるや寂しき霜月にわれしたためき何遂げざらむ 
紅葉の舞う山の湯にひそやかにあれば捨ておく黒き巷よ
かくてわれ老いざらめやも断念の歳月(とき)過ぎゆきてせつなきものを
あかときの湯のたちのぼりながらひて膝疼(や)みゐれば浴びぬ静かに

●奥州街道・芦野宿。東山道を西行は往来し、義経がひそかに下った。
 時経て、奥の細道に向かふ芭蕉が曽良を連れ遊行柳の陰に立ち寄り、旅を急ぐ。

 
一日、芦野の里を散策。城跡に立ち、遊行柳を見る。初冬の夕風に芭蕉の句碑。
芦野の里はしぐれおり旅人の西行、宗因、芭蕉、蕪村よ
田一枚植えて立ち去るひと誰やこととひゆけばしぐれふりける
元禄二年四月立ち寄りはべり柳の陰の旅の二人よ
ふと佇てば秋の柳のかなしくば西行芭蕉の歌碑に風吹く     
よしなきに遊行柳にゆく秋のひそかにうたふまこと愛しよ
夢のごと燃へたる道のかすかなれ祭りのあとの芦野の里は

●創業300年、老舗”丁字屋”でうな重
昼下がり蔵座敷にてうな重に舌鼓うつ江戸の味かな
紅葉の城址に佇てばかすかなる馬蹄のひびき流れゆくかも
夕ぐれの里にみちくる風の香にわがやみがたき命を鎮め
(たま)さかるさびしさゆえにたどりきて旅のゆくへに泣きぬれておる

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