デジタルクロック #001 組み立てへの注意事項
このページは本デジタルクロックを作ってみようかと考えている読者向けに準備しました.
著者は, 初心者に役立つような常識的な事柄を含む多くの注意事項を記すつもりです.
しかしながら, 本設計はいくぶん複雑であり, 本クロックは初心者向けの題材にはあまり
ふさわしくないように思われます.
回路図の記述スタイルに関する注意事項.
- IC :
パッケージオプションは, ほとんどのデバイスに対してはDIP, シャントリファレンス
LM285-2.5/LM385-2.5に対してはTO-92, 3端子レギュレータ78M05/7805に対してはTO-220と
仮定して回路図を描いています. 回路図においてICは top view あるいは front view で描き,
1番ピンには丸印を付けています.
- 7セグメントLED表示器 :
7セグメントLED表示器は, 文字高14.2mm(0.56インチ)の標準的な7セグメント1桁LED表示器の
front view とピンの割り当てにおいて整合するよう描いています. しかし, いかなる場合も
使用しようとしているデバイスのデータシートを参照されるよう勧めます.
- 抵抗器 :
抵抗器の公称抵抗値はオーム単位で指定しています. 例えば, 2.2 は 2.2 オーム, 10k は
10 キロオーム, そして 10M は 10 メガオームを表します.
- コンデンサ :
コンデンサの公称容量値はファラッド単位で指定しており, また文字 u はマイクロ(つまり
ギリシャ文字ミュー)を表しています. 例えば, 1000p は 1000 ピコファラッド,
そして 0.1u は 0.1 マイクロファラッドを表します.
- デカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ) :
回路図にはたいてい描いていませんが, 各論理ICの電源ピン間に0.01uFから0.1uFの
デカップリングコンデンサを取り付けるべきです.
本設計では, 14ピンあるいは16ピン外形に描かれている全てのICが, 使用している論理ICの全てです.
これら14ピンIC(つまり, 74HC20 (U2) と 74HC132 (U3,U4,U5))については, 電源ピンは7番
および14番ピンに割り当てられています.
これら16ピンIC(つまり, 4521B (U1), 74HC390 (U6,U7) そして 4511B (U8,U9,U10))については,
電源ピンは8番および16番ピンに割り当てられています.
- 回路図における小数点 :
すみません, 現在の回路図(ファイル sd030**.gif)には
小数点は非常に小さく現れています(1ピクセルの点のようです). ビューワーの倍率を充分とって
注意深く読んでください.
部品の選択.
- LED :
各セグメントあたり5mAの(静的な)順電流にて充分な明るさが得られるLEDを選んでください.
セグメントあたり5mAの制約は電源部の容量に関係しています. さらに順方向電圧降下が3V以内の
LEDを選択するよう推奨します.
- 7セグメントLED表示器 :
7セグメントLED表示器はコモン・カソード型でなければなりません.
単純なコモン・カソード型の表示器を選ぶようくれぐれもご注意を
(デジタル時計用の4桁LED表示器の中にはマルチプレクス型あるいはダイナミック駆動型の
表示器が多くありますが, これらは本クロックには使えません).
上記LEDに対する注意事項は7セグメントLED表示器にも適用されますので, そちらも見てください.
- 抵抗器 :
断りなき限り, 安価な5%誤差,1/4ワット炭素皮膜抵抗器で構いません.
- LED電流制限用の抵抗器 :
表示部の回路図 SD03020 において, LED電流制限用抵抗器の抵抗値は指定されていません.
その抵抗値 RLIM は数式
RLIM = (4.3V - VF)/IF
にて決定してください. ここで, IF は必要なセグメントあたりのLED電流値,
VF はLEDの順方向電圧降下です.
例えば, もしLEDセグメントに IF = 4.5mA が必要で, LEDにおける順方向電圧降下
VF = 2V が発生するなら, RLIM = 510 オームの抵抗器の使用が妥当です.
- コンデンサ.
- 回路図において極性(+/-)が指定されているコンデンサ :
標準的なクラスのアルミ電解コンデンサの使用が妥当です. 回路図にて指定している電圧値は
最低必要とされる電圧定格です.
- 容量が100pF以下のコンデンサ :
C0G(別の言い方ではNP0)特性で誤差5%, 耐圧50Vのコンデンサの使用が妥当です.
- デカップリングコンデンサ(回路図に明示的には描かれていないコンデンサ) :
安価なY5V特性の, 耐圧25V〜50V, 誤差+80%/-20%のセラミックコンデンサで充分です(少し
高価なX5RまたはX7R特性の品物も使えます).
- その他のコンデンサ :
断りなき限り, 耐圧25V〜50V, 誤差5%〜20%の, X5R, X7R あるいは C0G(NP0) 特性の
セラミックコンデンサの使用を推奨します(代わりにポリエステルフィルムコンデンサも使えます).
- トランジスタ (これは特に日本における読者向けに書いた注記です) :
東芝の 2SC1815-Y あるいは 2SC1815-GR が本設計におけるトランジスタ 2N3904 の代わりに使えます.
東芝の 2SA1015-Y あるいは 2SA1015-GR が本設計におけるトランジスタ 2N3906 の代わりに使えます.
これらトランジスタはどれも同じ外形(TO-92パッケージ)にモールドされているものの, ピン配置は
2N3904/2N3906 と 2SC1815/2SA1015 で異なることに一言触れておきましょう.
- 押しボタンスイッチ :
モーメンタリー型のノーマリー・オフの押しボタンスイッチあるいはタクトスイッチ
(押している時, かつその時に限ってスイッチが入るもの)を選んでください.
- 電源トランスおよびヒューズホルダー :
プリント基板取り付け型ではなく, なるべくシャシー取り付け型を選んでください(理由は
続く注記に).
安全性と信頼性に関する注意事項.
- 安全のため, 交流電力線つまり電源トランス1次側での絶縁には格段の注意を払うべきです.
試作様式の基板上で高電圧が掛かるパッド, トレース, 線材の間の絶縁性を長時間良好かつ
信頼できる形で維持するのは容易ではありません. それ故, 簡単ではあっても比較的安全な手法
として, 交流電力入力から電源トランスの1次巻線までの配線をすべて基板の外側で行うことを
推奨します.
- 電源線VccおよびGNDのIC間配線は, 多くのループを形成する複数経路で成されるのが望まれます.
さらに, むやみに長い線材を信号線の接続に使用するのは避けてください. これらは別々の回路図の
間の接続にも当てはまります(つまり, 例えば回路図SD03010の回路と回路図SD03020の回路を接続する
配線もむやみに長くすべきでない).
ただし, 電源トランス周辺の配線, 押しボタンスイッチへの配線およびLEDへの配線は少々長くても
問題ありません.
- 回路の組み立ての際, アルミ電解コンデンサは回路に組み込む前に放電しておくことを推奨します.
- 電源電圧(Vcc線とGND線の間の電圧)の急速な(1msあたり5Vを超えるレートでの)低下は, ある
コンデンサの放電電流が通過するいくつかのICに損傷を与えることがあり得ます.
時計の普通の使用においてその様な条件は発生しませんが, おそらくは組み立てたセットの
デバッグ中に何らかの部品(特にコンデンサ)の回路への接続を行ったり, あるいは事故もしくは
意図的にVcc線とGND線を短絡したりすれば発生し得ます. 特に回路のデバッグ中はそのような
条件を発生させないよう注意を払うべきです.
基板組み立て例の写真.

電源トランス, ヒューズ, ヒューズホルダー, 9Vバッテリーおよびバッテリースナップ
を除く全部品を1枚のユニバーサル基板上に実装.

部品面の写真.

ワイヤラップ用線材で配線する前の半田面の写真.

配線完成後の半田面の写真(ワイヤラップ用線材も半田付け).
Homepage URL: http://www.uranus.dti.ne.jp/~n-sasaki/