カーディナルはホテルの中庭で一番高い木の枝に止まり囀った。
ここをソングポストにしているようだ。しばらく観察していると、この枝が最もお気に入りのようだったが中庭の植え込みを順に回った後、向かいにある林の中に帰ってゆくことを30分間隔位で繰り返しているようだった。
私は中庭のベンチに座り、ひたすら待った。カーディナルはまた戻ってきてプールサイドのフェンスに止まった。カメラをそこに向けたが、その瞬間に飛んでしまったようだった。ファインダーの中に見えたのは赤い鳥ではなく、赤いビキニの女性だった。「ス、ス、スゴイ...桃のような...いやスイカ位はある....」 思わずシャッターを切りそうになったが私の指は硬直して動かなかった。よくよく考えてみればここで望遠レンズを持って座っていたら誰が見ても鳥ではなく女の子を狙っているとしか見えないではないか。
これでは盗撮であり犯罪である。これはちょっとマズイなぁ...と思ったその瞬間、後ろから突然声をかけられた。"Hello,"振り返るとそこにはホテルの受付嬢が立っていた。私はドギマギしてしまった。"Are
you a visitor of this hotel?" 「イ、イエ〜ス」 (やっぱり注意しにきたのかなぁ)"What
are you doing now?"「ア、アイム テイキング ア ピクチャー オブ ...ディス バード。」丁度その時、カーディナルはいつものソングポストに止まって囀り始めていた。
私はシャッターを切った。"Oh, you are
very lucky. Fantastic! Congratulations!"
"Now, Our free dinner is starting. Please
come to the restaurant." 私は「盗撮」を注意しに彼女はここに来たとばかり思ったが、彼女はただ夕食の時間を知らせに来てくれただけだったのである。
中学か高校の時に習った漢語を思い出した。李下の冠、瓜田の履(桃畑で冠を正すな、スイカ畑で靴を直すな(犯罪に間違われるような紛らわしいことはするなの意味。)1999年6月21日(第3話に続く)