ワライカワセミ

 私は"Swamphen"の写真を撮っていた。鳥の写真を撮るために立ち止まる私を無視して妻達はどんどん先に行ってしまうのだが、この時は何故か「アンタ、ワライカワセミそこにいるわよ。」と教えてくれた。
昔から一度は会ってみたいと思っていたワライカワセミ。初めて会うワライカワセミはぬかるんだ細い流れの上の茂みの中にいた。
ワライカワセミは下をジッと見つめ、動かない。カエルでも狙っているのか。そのワライカワセミを狙っている私も長いこと動かなかった。そんな私を無視して妻達はどんどん先に行ってしまった。ワライカワセミは殆ど動かないのだが、私は少しでもカワセミが動けばシャッターを切り、少し自分が動いてアングルを変えてはまたシャッターを切り、何枚もフィルムを無駄にした。

ワライカワセミファミリー

いつまでも動かぬワライカワセミの前で動かぬ私。その私に娘が遠くから呼んできた。
「お父さん。ワライカワセミが鳴いているよ。こっちにはワライカワセミがたくさんいるよ。」
そういえばさっきから「クヮカカカカカカカ....」と何かが鳴いていた。これがワライカワセミの声だったのか。「クヮカカカカカカカ、クヮカカカカカカカ、ウーホホホホホホ。」確かに笑っている。
初対面のワライカワセミと別れ、私は急いで娘達を追った。
林を抜け、頭上が開けたところに行くと大きな木の上にワライカワセミがたくさんいた。少なくとも4羽以上いたが、興奮した私は全体を観察しないままカメラを覗き込んだ。少なくとも300mmレンズのアングルに4羽のワライカワセミが映った。(シャッターを切る直前に移動してしまったので、まともに同一アングルに4羽を写すことはできず3羽になり、さらに構図を考えてない素人写真になってしまったが)
取り敢えず何枚かシャッターを切った。カワセミの仲間でこんなに群れているところにまだ私は会ったことがなかった。何故こんなに群れているんだ?これは謎だ。よく見ると下嘴が肌色のものと黒いものがいた。オスとメスかとその時は思ったが、後でホテルに帰って図鑑を見ると幼鳥は黒、成鳥はオスもメスも下嘴は肌色だとのことだった。
とするとこの群れはファミリーだったのだろうか?

ワライカワセミの食事

その後、園内の至る所でワライカワセミに出会った。キノボリカンガルーの柵の上、クロコダイルの柵の上、道標の上、歩道の上、そこら辺にワライカワセミはいた。地元の人たちはあまりこのカワセミには興味がないようで、皆、無関心に横をとおり過ぎて行った。ワライカワセミたちは皆、下を凝視していた。何か餌を探しているようだった。
あるカワセミを見ていると、そのカワセミはスーっと地面に舞い降り、枯葉をめくり始めた。枯葉をめくってはミミズを捕らえ、美味そうにほお張り、また枯葉をめくりミミズをほお張った。前の方に気が集中しているようで、眼球が前に移動するため、目の後ろのほうの白目が目立った。私は今まで鳥の目というのは固定されていると思っていた。人の目のようにギョロギョロと動き、白目をむくようなことがあることは知らなかった。凄まじい笑い声といい、このギョロギョロと動く目といい、何とも愛着の沸く動物ではないか。カンガルーやコアラを押しのけ、シドニーオリンピックのマスコットになった理由が判る気がした。(2000年3月観察、8月12日記)