2006年11月24日。オルカウォッチング2日目。
昨日は大きな船からの言わば偵察。今日はメインイベント、「オルカと泳ぐ」ツアーに参加した。
朝、ホテルで朝食を摂っていると日本人に出会った。ここで日本人に会うのは珍しく、3日目にして初めてだった。
彼も日本人に会うのは珍しく、3回目にして初めて会ったとのことだった。
僕たちはすぐに意気投合し、友達になった。
朝食の後、すぐに準備に取りかかった。まずは長いことトイレに行けなくなるので、出すものは出しておく。次に保温性の高い長袖とタイツの下着、長靴下をそれぞれ2枚重ねにして集合場所へ向かった。そこでさらにシンサレートがたくさん入ったツナギとブーツを履き、その上にドライスーツを着た。ドライスーツはブーツが一体になっていて、腕と首が薄い弾力のあるゴムになっていてそこからの浸水を防いでいた。また、背中には大きな開口部があるが、防水ジッパーになっていて、どうして水を通さないのか原理は良く分からなかったが、浸水することは全くなかった。
問題はドライスーツは脚の細長い西洋人の体型に作られていることだった。まず、僕の足の長さに合ったスーツを試したが、脚の太い僕では全く脚が入らなかった。そこで、脚が入る太いスーツに替えたのだが、今度は長すぎてしわだらけの芋虫のようになってしまった。
フードも顔の周りが柔らかいゴムで出来ていて、これを被ると頭は濡れない構造になっていたが、あごをゴムが引っ張るので、しばらく着ているとあごが引っ張られて痛くなった。これを着た後、体を丸めると、風船のようにスーツが膨らみ、余計な空気が腕や首から外に出た。これをしないと水中で風船のようになって浮き過ぎ、身動きが取れなくなるそうだ。

ドライスーツを着たら、脚が...
オルカの棲むフィヨルドは水温約5℃。手は水が入ってくるウェット手袋、顔は水にさらし、普通の水中マスク、シュノーケルを付けた。水面でバタつかせるとオルカを怖がらせてしまうため、足ヒレは禁止とのことだった。随分着込んでいたため、寒くないというよりはむしろ暑い位だったが、顔面や手をこんなに冷たい水に浸けても本当に大丈夫なのだろうか?心配に思いながら小さなボートに乗り込んだ。

ゾディアック(大きなゴムボート)に乗って出航した。
出航してまもなくオルカのファミリーに出会った。



これは幸先が良い。早速入水する準備をした。
近くにオルカファミリーが来た。
「Go, Go, Go...」
船長の指示に従い、入水した。
水音を立てるとオルカが驚くと言うので、出来る限り静かに、寝そべるように入水した。
入水してまずはカメラを確認した。
水漏れはないか?水漏れなし。
LCDに画像が表示されるか?アレ?何でブルースクリーンなんだ。

あまりにきれいな単一のブルーだったので、カメラが壊れたのかと思った。
何でブルースクリーンなんだ?
カメラの設定か何かか?
カメラの周りのボタン類を思わず見回した。
何でブルーなんだ?
良く考えてみると、ここはフィヨルド。水深500m~800m。岸はかなり遠い。水の透明度は30mと聞いていた。
だから目の前が均一のブルーで何の不思議もなかった。これは当たり前なんだ。
レンズの前に手をかざすと、LCDに手はちゃんと写って見えた。何だこれだけのことか。
こんな風にカメラに気を取られている間に、オルカは去ってしまっていた。
もう近くにオルカが戻ってくる様子もなかったので、船に戻った。
先ほど友人になった日本の人は入水直後に潜って行くオルカに会えたそうだ。
僕はカメラに気を取られたためにオルカを水中では見ることができなかった。
残念!
また、ボートに乗り、オルカが来てくれそうなところに先回りした。

オルカはまだ遠い。と思っていたのに船長が突然「Go, Go」と叫んだ。
「ウッソー。こんなに遠いのに潜って見られる訳ないじゃん。」と思いながら振り返ると、皆は船の反対側に次々と入水していた。
船のすぐ横に大きな波紋があった。こんな近くにいたのか!
船長は僕を見て、君は何をしてるんだという目付きで言った。「Go, Go, Go!」
皆に随分遅れて僕もエントリーしたが、手遅れだった。
その後もボートはオルカを追ったが、オルカの態度が変わった。船が近づくと明らかに嫌がるように深く潜行してしまう。
僕らの船だけでなくかなり多くの船が同じオルカのファミリーを追っていた。ひどい船はかなりアグレッシブにオルカの群れの中に突っ込んでいった。
オルカが嫌がっているのは明らかだった。

オルカやイルカ、クジラのウォッチングでいつも付きまとう問題だ。ついつい見たくて、見せたくて、相手にプレッシャーを与えてしまう。
しばらく追いかけて、オルカには完全に嫌われてしまった。
その後、この群れを追いかけるのはやめて別の群れを探したが、この日は他のオルカの群れを見つけることができなかった。
オルカウォッチング3日目。
この日も前日同様にオルカと泳ぐため、ドライスーツを着て、例のゴムボートに乗り込んだ。
前日との違いは天候が良くなかったこと。時々雨が降った。時々雨は雹が混じり痛いこともあった。
それに耐えてオルカを探した。時々漁船を見ると、オルカを見なかったかと尋ねながらかなり遠くまで滑走したが、結局1頭もオルカを見ることはなかった。失意の中、夕方帰港した。残念!
なお、このツアーは2回連続でオルカに逢えなかった時は、3回目は無料でやってくれるとのことだ。それは年を跨いでも有効とのこと。
したがって、来年も申し込み、初日に見られなかった時は翌日はただにしてもらう。来年も来るんだから。絶対に!