よたよたと、山登り


    No.41 初の沢で一泊

       

    小荒沢〜 黒花沢〜ブナ平

      8月13日 小荒沢林道〜小荒沢〜黒花天場

     夏はやっぱり沢でしょうと言う事で、船形山のブナを守る会のKさんが企画したものにTさんが加わり、私にもお誘いの話しを頂いて参加させてもらったのが今回の小荒沢を詰めつつ、黒森と花染と命名されているブナの二大巨木を見に行くと言う山行でありました。
    テントと食料など一式を分担して背負うと言う事なんでありますが、私は非力と言う事で僅かな食利用を背負ったのみでして、紅一点のYさんと良い勝負の軽荷でありました。
    いや、見た目の体格的にはそこそこ行けそうなんでありますが、根が屁タレなものですから、なんだか足手まといのようで申し訳ないと思いつつも、しかし、気分はルンルンと小荒沢林道を登って行く訳であります。

    入渓してすぐからほとんど人の気配のない渓相が見られました

     いつも単独の私は、前後に人が歩いていると言うだけで心理的な負担が全く違うようでして、心底開放されるのであります。
    しかし、気持ち的にはルンルンなんでありますが、アレです、食料しか背負っていないはずなんですが、それでもまずまず、泊まりの荷物なので、そこそこの重量はある訳です。
    薄曇りで気温も上がらず、汗も大してかく事無く軽快に岩を飛び、渕をかわして沢を詰めて行くんでありますが、調子の出ている時程「要注意」であります。
    大した事の無い岩を乗り越そうと大きく上げた右足に体重を掛けた時でありました・・・右足下の苔がベロンと剥がれて滑り落ちたのであります。
    気を使う程の場面では無かったので手は遊んでいまして、何も掴んでおりません。
    と、言う事で、もんどりうって落下・・・いや、落下と言う程の高さでは無いのですが、それでも、自分の頭の高さからとしても、1.75メートルの高さを背中から落ちた訳であります。
    結論から言うと、何事も無かったんでありますが、その、落ちていると言うか、浮いていると言うか、中空にある瞬間が「時間」として明確に感じ取れた事が驚きでありました・・・なんと申しましょうか「ああ落ちているな」と、はっきりと認識出来る、結構な時間であったのであります。
    まあ、ザックの背が高く、頭までカバーしていたので、背中も頭も守られナンと言う事も無かったんでありますが、パンツまでびっしょり、がちょっとアレでしたが。

    倒木の乗り越し・・・いや、くぐっても良いのですが、この場面はどっちが良いと思いますか?

     参ったなぁ・・・びしょ濡れなのに下は着替えが無いし、パンツ乾くかなぁ、なんて事を心配しながら詰めて行きますと、小さな滝やら倒木が出て来るんでありますが、小荒沢、なんて言う名前の割には渓相は全体的にやさしいんであります。
    沢を挟む尾根が高く無いのと、向かっている終点、源頭の標高に対して距離が長いので穏やかな沢になっているような気がします・・・なーんてね。

    高巻きは一つも無く、こんな感じの、塩梅の良い滝で楽しめます

     この度の沢登りの目的は二つだそうで、一つが、積雪期にしか行けないと言われるブナ平を小荒沢から行ってみよう、であります。
    そして、二つ目は、当然の事として、小荒沢の源頭を確認する、と言う事なんだそうであります、が、私は沢を歩ければ何でも良い、と言う事で、ことさら目的意識は無いと言う不届きものであります。
    連れて行ってもらう立場、と言うのは気楽でありまして、なぁーんにも考えずに後を付いていれば良い訳で、お気楽至極であります。

     
    釜をへつって行くんですが、ここ、結構難所です・・・かな?

     滝はよじ登って落ちたら怪我する訳で、おのずと慎重になるんでありますが、釜のへつりはアレです、失敗するとドボンな訳で、身体は痛く無いんですが、心理的には激痛な訳です。
    しかし、命に関わらない危険はどこか楽しい訳でして、私はへつりが大好きであります・・・荷物は一応防水してますが、ドボンに耐えるかどうかは?です。

     あんまり早く上り詰めても楽しみが薄れると言う事か、歩くペースは私には丁度良いスローペースでありまして、助かりました。
    んじゃぁ、ちょっと早めの昼飯にしましょうか、と言う事でT(ヘボン式だとC)さんが用意してくれた、納豆餅などを頂いたんでありますが、山奥で食べる納豆と言うのも絶妙であります。
    しかし、美味いものを喰う為に厭わない労力には、ホントーに感服いたします・・・参りました、ごちそうさまでした。

     昼飯休憩の時に見た光景でありますが・・・。
    ビッキが一匹小さな滝と言いますか、落ち込みと言いますか、そんな流れに乗って漂っているのが見えたんであります。
    で、皆様ご存知の様に、落ちて来る水の芯に入ると流されずにそこに留まる事が出来る訳ですが、蛙はそれを知っていて遊ぶ訳です。
    流芯で水を受けてそこに留まったり、水量の多い所で落ちる水を受けて潜っては流されて浮かび上がるなど、確実に遊んでいるのであります。
    物の本で読んだ所によれば、動物が遊ぶと言う行為をするのは、相当に高等な脳みそを持っている、と書かれていた訳です。
    ガマガエルのようなビッキに高等な脳みそがあるとはとても思う無いんでありますが、ドー言う事なんでしょうねぇ?。

    本日のテント場であります・・・「黒花のテン場」と名付けられました

     そろそろブナ平に近いだろうと言う当たりで、まさかと思う程におあつらえ向きのテント場が見つかりました。
    沢から一段高くなり、真っ平らで石や岩も出ていなく、笹や雑木が茂っている訳でもない、まったく持って不思議な場所でありました。
    途中でTさんがイワナ釣りなどして刺身を頂くはずだったんでありますが、釣りの餌になる川虫が全く採れず、これでは名人も手が出せない、と言う事でありましたが、折しも、偶然見つけたホニャララ茸が手に入ったので、んじゃぁ晩飯と酒の肴はこれで生きましょうと言う事で一件落着、嬉しい誤算。
    テントを張りつつ、ホニャララ茸を炒めたりして、早速乾杯と相成った訳でありますが、この頃から雲行きは怪しくなり、ポツポツと降って来た訳です。
    辺りが暗くなった頃、表で宴会を続けるには強過ぎる雨がやって来まして、メインのテントに一式を持って避難し、その後、延々と呑み続けであります。
    隊長のKさんはかなりな酒豪でして、余り強くも無い私も相当飲んでしまった訳です。
    紅一点のAさんとTさんは時々休憩の一眠りなど挟みつつ、起きては参戦していたんでありますが、隊長と私は、目ん玉ひんむいて激論など交わしつつ、酒が無くなるまで飲み続けたのであります・・・絶対に勝てない、と確信しました・・・いや、激論は負けないと思うんですが、酒は絶対に勝てません。
    ちなみに、やっつけた酒の量は、ビール350を6本、日本酒5合、ワイン1リットル、ウィスキー500ml・・・呑みたい一心で担ぐと重く無いんですよ。

     
    ブナの巨木・・・周囲3.5メートルくらいありますが、写真では小さく見えますね

     昨夜の就寝は11時近かったんでありますが、皆様二日酔いも無く早起きであります・・・4時半頃には音がしてました。
    私もトイレに行きたくて、ドーしようかな、と迷っていた所だったので、少し重たい頭を抱えつつテントから出まして・・・朝キジ、であります。

     その後、パッキングだけしてブナ平に行くと言う事で、コーヒーとビスケットを軽く腹に入れ、地図で場所を確認して小さな枝沢から花染山からの稜線目指して出発であります。
    この枝沢は今後このコースを行こうとする時に良い目印になるので「黒花沢」と命名されまして、ブナ平はここから真っ直ぐであります。
    ええっ?どこへ真っ直ぐなんだ、と問われますか?・・・うーん、私が見つけたルートじゃないんで、私のHPでは大っぴらには出来ません、へへへっ。
    歩き始めはちょっと急で足場も悪いんですが、後は平坦な薮漕ぎでして、テント場からは意外に近いんであります。
    と、言う事は、皆様の地図読みがピッタシカンカンである、と言う事で、実際、常に自分らがどこに居るのかは的確に把握されていた模様であります。
    模様でありますと言うのは、自分は地図を見ていないんで、そう言う事になる訳であります。

    これが幻の「小荒沢源頭」の水源地だ・・・と、騒ぐ程でもないのですが

     ブナの原生林を堪能してテント場に戻り次なる目標「小荒沢源頭」に向かって出発であります・・・個人山行だと時間をメモるんですが、今回忘れました。
    歩き始めてすぐから、水量は細くなっているんでありますが、しかし、地図で見て長い沢だけ有ってしぶとく細い流れでづっと続くんであります。
    傾斜が緩く、滝や渕が出て来る気配もなく、だらだらと遡って行くだけの沢と言うのは結構飽きるもんでありまして・・・本気で飽きました。
    いや、この雰囲気はそろそろだろう、と思って歩くんでありますが、角を曲がったらまた水量復活みたいなしつこさで続く小沢を歩く事1時間20分。
    先頭から水源発見の声が聞こえまして、私のGPSで確認した場所によれば、標高的には1135メートルで、三光の宮にとても近い所に水源はありました。
    さて、最終目的が達せられたんで三光の宮へ出よう、と言う事で最後の薮漕ぎに精を出した訳であります。
    で、嫌になる程キツイと言う程の薮でもないところをバサバサとかき分けて程なく、ドンピシャリと三光の宮の分岐点の柱の前に出た訳であります。
    一同、感激の握手のあと三光の宮に上がり、松島湾まで見通せる絶景の中でしばし休憩などして升沢小屋で「朝・昼」飯を食うべく向かったのであります。

     
    チャーシューと餅とホニャララ茸まで入った豪華なラーメンであります

     升沢の小屋までの道々は、それぞれが、腹減ったぁとか、結構バテたなぁ、とか言いながら、のんびりと向かったんであります。
    しかし、荷物を少なくするんで、沢から後の登山道用の登山靴は持っていないんでありますが、フェルト底で歩く土の登山道は、この上なく良く滑ります。
    小屋では、豪華なラーメンと美味しい御飯と、コーヒーなんかも頂きまして、のんびりと過ごしました。
    至福のときと言うのはこんな時間の事でありましょうか・・・ここから上は風が強くガスっているようなんでありますが、この高さまでは晴れ渡って天国でありました。
    で、飯の支度をしながら隊長が「昨夜、最後に無理くりやっつけたビール2本は残しておけば良かったな」と宣ったんであります。
    と、そんな時、ふと小屋の物置棚を見ますと、500の缶ビールが1本「呑んでくださいましな」と、私に語りかけているではありませんか。
    協議の結果、これはデポ品では無く、残り物として小屋に寄付して行ったものであるとの結論に達し、あり難く、さっさと冷やすべく沢に沈めた次第であります。

     さて、腹が一杯になり、マッタリムードの中、本音では一眠りしたかったんでありますが、頃合いも良く、11時半に  下山開始であります。
    途中、随分とゆっくり休憩を取り、森林浴などして名残を惜しんでの下山でありました。
    昨日の曇り時々雨から一転して、晴天の上に乾いた西からの風でこれ以上は無いと言う光が木々に降り注ぐ様に、命の洗濯などさせて頂いた思いで、旗坂キャンプ場到着は3時でありました。

    しかし、食料とビールが重かった私は初日だけの重さなんでありますが、Tさんは20メートルと40メートルの濡れたザイルを背負われた訳で、これはいつまでたっても軽くなる事は無い訳で、いやいや、ホントーに頭が下がります・・・お世話様、ご苦労様でした。

    このような山行に同行させて頂けて、感謝感激雨霰・・・次回も誘って下さいね、と。


     この話 完


    場所や時間はかなり適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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