魔太郎に映画に誘われた女子


 風邪から発したのか、中耳炎になってのたうちまわってました。とても痛かったです。風邪以外で、病名のつく病気になったのなんて小学校以来だと思う。大変苦しみました。

 まあ、それはともかく…アタシも含めて、先週くらいからアタシの勤める部署内で、体調を崩す人が多かったのね。これはひとえに空調のせいだと思うの。コンピュータが多いせいもあって、冷房温度も湿度も低め設定だし、なんだか安定してないのね。と、どう考えてもそのせいなのよ!なんでこんなとこ強調するかというと、「アタシの呪いのせいだ」って言われちゃってるのよ。変な噂広めないで欲しいわ。別にアタクシ、性格暗そうなわけでも、人を呪いそうな外見なわけでもないのに、なぜか今まで働いた会社全部で、不幸が起きると「アタシの呪い」って説が広まったのよね…フフ…。「呪い大スキ☆不思議少女」なキャラクターに見えるのかしら。うーん、別に構わないんだけど、自分で「霊が見える」とかいう女(モノホン)は嫌いよ。そんなんでキャラ作りしてんじゃないわよ。

 さて、話は飛ぶようだけど、アタクシの部署の男はほんとに外見がひどいの。アタシは99年3月に今の部署に吸収合併という形で異動してきたんだけど、引越し当日、失望と共に「ロ・ク・な・男・が・い・な・い」と掌に指で字を書いて同僚女に伝えたほどよ。その後、ある程度慣れはしたものの、やっぱりコンピュータ系の部署にロクなのはいないわ〜、とか、デブばっかだわ〜、とか、素人童貞多そうだわ〜、とか、オタッキー多いわ〜、とか、女に飢えてるのが出てる男ってやーねー、とか、そんな会話を同僚女子とする日々なの。ほんとひどいのよ。上司はちょっといいけど。他はお友達にすらなりたくない感じ。

 アタシの同僚にTちゃん(彼氏ナシ・24歳)って女の子がいるのね。彼女は豊かな声量とちょっとぽっちゃりなボディの明るい女の子。でも実はそれはかなり仮面なのね。人当たりよく、元気にいろんな事を乗り切ってるの。アタシは女の演技にはあんまり騙されないから、Tちゃんから自分のことをどう思うか聞かれた時は「したたかな女で家では不機嫌そう」と答えたら見事に図星だったらしくて、大笑い。それ以来より仲良くやってるのね。

 この部署にやってきてちょっと不安になったのが、Tちゃんは大変もてるのではないか、と、いうこと。なんていうか、「アンタ仕事と風俗以外で最後に女の子と喋ったの何年前?」って聞きたくなるような人達の中に、こんな明るくて誰にでも人当たりがいい女の子が放り込まれたら、勘違い男多数出現はもう目に見えてるわ。「話しかけてくれた」とか「明るい笑顔で応対してくれた」ってだけで「もしかしてボクのこと好きなのかな…」なんて思いそうなんですもの。

 そんな中でも特に女(素人)に飢えてるのが丸分かりなのが、3人いるのね。「この人達ならつきあってって言えば間違いなくつきあってもらえるわよ、良かったじゃない。モテモテよ、雑魚にだけど。」と言うアタシに「嫌ー!!」というTちゃん。まあねえ、雑魚っていうより、ゴキブリとかヒドラとかあんまり気持ちの良くないものに例えたいくらいだもの。そんなのにもててもねえ。とりあえず、この3人はTちゃんに寄ってきそう、という予測はしていたのよ。

 そしてその中でもヒドイのがいて、もう、モロオタッキーな外見+中身、なのね。デブ、メガネはもちろんよ。顔は藤子不二雄の「魔太郎が来る」の魔太郎に似てるわ。あれを身長180にして30代半ばにしたって感じね。そして、オタッキー特有、場を見ないで自分の得意なことを滔々と語る、ってのもやるわ。「私、生理的にあの人だめだわ」と、同僚女子に話してたの。同意者多数。っていうか全員よ。

 Tちゃんが1人で残業していた夜のこと…気づくと魔太郎が後ろに立ってたの。そして端末に向かって作業中のTちゃんをジーッと見てるのね。しばらくしてからボソボソと話しかける魔太郎。なぜか映画の話になり、Tちゃんが「今度映画見たら感想教えてくださいね!」(裏の意味:「一緒に行く気はありませんから!!」)と予防線を張ったにも関わらず、魔太郎が「車で迎えに行きますから今度の日曜日に映画を見に行きませんか」と誘ったのだった。

 端的に言えば、同僚が同僚を映画に誘った、というそれだけのことである。しかし、その話を聞いたアタシと同僚女子の反応は凄まじかったわ。以下は誰がどれでも一緒なので氏名略。



「何それ?ふざけんな。セクハラ?Mさん(上司)に言う?」
「セクハラは2回以上性的な嫌がらせを断って更にやってきた場合でないと訴えられないそうですよ」
「あの…映画に誘っただけでセクハラってのはちょっと…」
「車ってのが怖いよ、絶対乗りたくない、乗っちゃダメ、危険すぎる、逃げられないよ」
「そうよ、車がオートマで、D(ギアね)に入れた後、そっと、手を重ねてきたらどうすんのよ」
「うわっ、吐く!」
「で、3回食事したらアレと寝るのよ?想像してみて」
「イヤー!!!」
「風俗嬢は偉いよ、あんなのとも寝るわけでしょ、相手選べないんだし」
「そうよ、あんなのと1日6本とかで、しかも自分から積極的にサービスしなきゃいけないのよ!マジで偉いよ!高い金貰っても当然だよ!」
「Hなしで援交とか言ってる女子高生、ふざけんなって思ってたけど納得いくわ。あれだったら、会話とか手をつなぐだけでも6ケタもらわないとワリがあわないわ」
「でも困ったわねえ、Mさん(上司)にも言えないし、いかにもストーカーとかしそうだし」
「あれがそういうの(性犯罪)で逮捕されて同僚のインタビューとかされても『そんなことしそうな人でした』としか答えられないよねー」
「ねえねえ、どうせロクな男いないんだし、『Tちゃんは彼氏いる』って噂流しとくー?」
「そうよ、あんなのに言い寄られるようなハメになるんだったら、アタシだったら絶対流すわー」
「みんなでTちゃんを守らなきゃ!」



 と、まさか本人も裏でここまで言われてるとは思ってもいまい…と、いうほど盛り上がりました。女の子(とオネエ)って怖いわね。そしていつも通りオカマパワーでアタシがそこに混じっていることは間違いなく魔太郎の想像のほかね。魔太郎(既にアダナ)もなあ…ここまで言われるほどひどいと自覚してないんだろうか?Tちゃんが完全に被害者扱いだよ。

 うーむ、外見って大事だ。中身も大事だ。両方ダメだとこの扱い。何より、別に好きじゃない相手から誘われても、それを話す時には多少は自慢気になるじゃない?それが全くないTちゃんが哀れで…だって相手がひどすぎるもんね。「でも、またみんな(同僚女子とアタシのこと)に報告できるネタができるかと思うと、また何か言われるのもちょっと楽しみ」なんて、ウォー!Tちゃん、不憫すぎだ。それに対して「残業する時、1人になったら何されるかわからないから本当に気を付けなさい!」とマジ顔で言う同僚女子もなんだが、本当にそうである。


 さて…話は戻って、冒頭の呪い話。魔太郎話をしてる時に同僚女子に言われたの。「これもN君(=アタシ)の呪い?」って。アンタそれは濡れ衣よ。予測はしたけどさあ…。ひどいわ。魔太郎よりはマシだけど、アタシのキャラもいいかげん扱いがアレね。あ、でも魔太郎と違ってアタシは来週の土曜日Tちゃんと遊びに行くけどね。魔太郎にこれがバレたらちょっと怖いわ〜。