■長野県美研 研究推進係

 

 長野県美術教育研究会 研究テーマ

(平成23年4月公開)
ひびき合う感性 「私っていいな!」 楽しく“子どもアート”

 長野県美術教育研究会では、65年の長きにわたり美術教育の充実を希求し、数多くの実践と成果を残してきた。
 私たちはこれまでの研究から、一人一人の子どもの可能性を引き出し、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ教育の実現のために、美術教育が果たす役割は大きいという確信を得て、その充実を図ってきた。しかし、近年、学力向上が強く叫ばれ、数値で成果が判断される傾向が強まる中で、改めて授業に目を向けてみると、「図工の指導がわからない。苦手です」という小学校教師の声から、美術教育の重要性が十分に認識されずに、指導の工夫がされない中で子どもたちの学びが展開されている現状が認められる。本来、図画工作科・美術科は、楽しく活動しながら、感性や創造的な思考を鍛え、自己肯定感を高め、表現力を伸ばすという目的をもっている。そこで培われる学力は子どもたちの内面に蓄えられていくものである。私たちは、見えづらい学力を、見えやすい指導をもって高めたいと願う。本会の会員にとどまらず、図画工作・美術の授業に携わる全教師の授業力向上が急務と考える。
 2010年、私たちは全人教育の充実のために美術教育が果たす役割を全会員が再認識し、その実践に当たっては、指針となる全県テーマを掲げて歩むことが必要と考えた。研究テーマ設定に当たっては、先人の築き上げてきた足跡をたどり、その成果を確認するとともに、近年の大会総括の見返しを大切に考えた。
 私たちの研究の中心には常に子どもがいる。子どもが主役の研究である。子どもの学びをとらえたとき、そこには、子ども同士の感性のひびき合いと子どもと指導者の感性のひびき合いがある。そして、このひびき合いによってつくりだされる形や色などの表現から新たな発想や技能が生まれ、互いのよさや工夫点などを語り、伝え合う中で、興味や意欲が高まるとともに、自分の表現や鑑賞の活動に自信が生まれ、自己肯定感を実感する姿が見られる。子どもたちが「私っていいな!」と実感する瞬間である。このような姿は、子どもたちが心を解放し、“楽しく”活動する授業の中に見られる。私たちの目指す授業である。
 また、“楽しく”の実現のためには、高い教師力が欠かせない。子どもの実態把握、保護者の願い、社会情勢等を熟知し、教師自身が「楽しさ」を実感できる題材開発、教材研究、指導計画などを探求していく情熱が必要であろう。子どもたちが授業は「楽しい」と発し、同時に教師も実感できたとき、学びは充実し願う学力は伸びると考える。このような授業の中で育った子どもたちは、将来にわたり図画工作・美術の学びの価値を認め、その必要性を支持する人となるであろう。
 そして、本会が65年間、研究の中心に据えてきた“子どもが主役”の研究スタイルの継承を願い“子どもアート”に私たちの決意を込めた。“子どもアート”とは、子どもの感性や思考をもって展開される全ての表現及び鑑賞の活動であり、子どもの将来に渡って「生きて働く力」を育む活動であると考える。私たちは、子どもと共に感性を働かせて形や色に、表現の巧みさに感動し、共に喜び、悩み、語り合う指導者でありたい。そして、活動を通してはぐくまれた力が他教科や日常生活にどのように生きているのか、さらに子どもの人格形成や心をはぐくむ上で有効に働いているのかなど多面的に追究していきたいと思う。幼児教育や特別支援教育においてもこの視点をもって追究していきたい。
 このような願いと考えに基づいた実践が多くの教師の理解と共感を得て、すべての教室の図画工作・美術の授業の充実につなげたいと思う。そして、形と色とコミュニケーションによる表現および鑑賞の活動は、子どもたちの将来に∞(無限)の可能性と希望を与えることを確信したい。
 私たちは、このような子どもの姿と教師像を希求し、本会のすべての活動がこのテーマの下に展開され、美術教育によって子どもたちの未来がさらに輝くものになることを願いこのテーマを設定した。

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