県中美ニュース87号
巻頭言 新副理事長挨拶
副理事長 清沢 龍美(天龍中学校長)



「美術でこそ育成できる資質や能力」を意識して

 本連盟の副理事長を仰せつかりました。窪田理事長と会員皆様のご指導の下、励んで参りたいと思います。よろしくお願いします。
 私は20年近く前に中美連の会計を少しやらせていただいたことがあります。そのころ話題になっていたことは、美術の時間数の確保、必修教科としての存続といったことでした。これらのことは今でも美術科が直面している課題であると思います。
 中学校の教育課程において、美術科が必修教科として存続していくこと、美術の授業時間数が確保されていくこと、このことは当たり前のことではなくて、私たち美術に関わる教師の不断の努力によって継続されていくことだと思われます。そんなことに関わって、思うことの一端を述べてみます。
 「美術の授業はなくてはならないもの」と、生徒・保護者・地域の方・教育関係者が感じているでしょうか。なかなか難しい面がありますが、まずは生徒に美術の楽しさや必要性を感じさせることに意を用いることが大切になります。
 例えば、授業の中で、「新しいアイディアがいろいろ浮かび、それを試していくのが楽しかった。」「花の色が弱かったので、少し赤を混ぜて上に重ねたら、前より迫力が出てきてよかった。」等、一時間の中で感じられた喜びを、制作カードに書き留め自覚する場面を終末に位置づけていくことは、大きな意味があると思います。教師から「発想する力がついたね。」「自分で課題を発見して、それを解決するための工夫ができたね。」とコメントを入れれば、生徒も「美術の学習を通してこういう力が身につくんだ。」と、美術の意義を感じることができるのではないでしょうか。同じように、題材の終末や学年末ごとに「この制作(または一年間の美術)を通して、自分はどんな力が伸びたと思うか」と問いカードに書くようにすることで、生徒が自分にとっての美術の意義・価値を常に問う態度ができていくと思います。そうすれば、将来生徒が社会に出たとき、「中学の美術で学んだことが、今こんなことに生きている。」という話題が同級会で語られるようになるかもしれません。
 ともすれば生徒には、「美術の時間は息抜きだ」とか、「うまく描けないから苦手だ」という意識があったり、保護者には、「生まれつき絵は苦手だった」「五教科じゃないから、だいたいでいい」といった意識があったりします。また、教師も作品のでき不出来に目が行きがちなことがあります。その中では、美術を通して育つ資質や能力について意識されていないことが多いように思います。私たち美術教師は、必修教科として、一人の人格を形成する上で、他の教科では育てることの難しい部分、美術でこそできる資質や能力の育成を、美術科が担っている」という意識に立つ必要があるのです。
 さて、美術で育てる資質や能力は、言うまでもなく四観点「関心・意欲・態度」「発想・構想の能力」「創造的技能」「鑑賞の能力」で示され、題材の目標も評価も、研究協議もこれを窓口にしています。この四観点とともに、私がもう一つよりどころとしてきたものがあります。それは、現行指導要領の「解説−美術編−」P.24からの「エ 中学校美術で育てる表現の基礎的能力」に示されている次の8点です。
  @ ものの見方・感じ方を深めること(観る力、感じ取る感性)
  A 主題や発想を創出すること(発想力、イメージを浮かべる力)
  B 考えやイメージをまとめ組み立てること(構想力、構成力)
  C 形・色・材料で表す感覚や基礎技能を身に付けること
  D 創意工夫して、よりよく表すこと(まとめ上げの力)
  E 全過程を通して自己確認すること(自己確認の態度)
  ・〜よりよい表現のための工夫や新たな課題を発見したり、自分のよさや学習で得た   ことなどを発見・確認していくこと。
  F 作品を通してコミュニケーションや批評をし合い互いのよさや個性などを理解し    合うこと
  G 自分の作品に愛着をもち大切にすること
 いろいろな解釈ができる訳ですが、@Aを発想、Bを構想、CDを技能、EGを関心意欲態度、Fを鑑賞、と考えることができます。これは、新指導要領解説美術編から姿を消したようですが、四観点をより具体的にしたものとしてこれからも参考にできると思います。
 美術科の授業で、これらの力を育てているということを、まず教師が意識し、「あなたは今この活動を通して、こんな力を伸ばしている、発揮している」と声掛けができたらと思います。

 釈迦に説法になりました…。
 前号の理事長の文に示された今後の課題「芸術科目の選択教科論の先行き」「新指導要領での選択教科の廃止と美術教師の減少」「山間地小規模校での美術教師の兼務化」等、厳しい状況がありますが、中学校の美術の先生方が互いに連携をとりながら、元気に美術教育に励んでいきましょう。

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