巻頭言 新理事長挨拶



理事長 窪田 正典(高森中学校長)



 
 「一人一人の人格の基礎をつくる美の教育に自信と誇りを持って」


 伝統ある本連盟の理事長を仰せつかりました。顧問の先生方の大きく深い実績に比肩すべき何ものも持ち合わせていませんが、会員の皆様方のご指導と支援の下、務めを果たしていきたいと思います。
 さて、美術教育にかかわる様々なマイナス状況が見える中、県中学校美術連盟では、現場の美術教師が元気の出るような活動の支援や情報発信を目指しています。今年InSEA世界大会が大阪で開催されましたが、大会会長の平山郁夫氏(日本美術院理事長、ユネスコ親善大使、前東京芸術大学学長)は次のように述べています。

「私たちが携わっている美の世界は未来を開いていくものでもあり、時として美は憎しみや悲しみの泥の中から蓮の花を聞かせるような力を持っています。未来を託す子ども達への教育には、とりわけ美の教育が大切です。伝統的な美と新しい美。子どもたちの生活や感情の奥底にそれぞれの美を根付かせることが、今ほど求められている時代はないでしょう。美の文化はどの国においても、その国民一人一人の人格の基礎をつくっているものですから、美の教育は偏狭なものであってはなりません。そのために図工科や美術科は、他の教科と力を合わせて子どもの感性に働きかける必要もあるでしょうし、自由に表現することと同時に、しつかりと鑑賞することも大切になってきます。美術の先生や研究者の方々がこのような広く調和的な教育の視野を持つことは、迂遠なようですが、子どもたちの未来の生を、そして世界を、調和に満ちたものに変革するカヘ連なっていると信じております。この機会を生かして美術教育に携わっておられる多くの皆さまが、世界の美術教育者たちとともに視野を広げ、連帯し、美と調和の教育を探究されることを心から祈念するものです。」

 「美の世界は未来を開いていくもの」「美は憎しみや悲しみの泥の中から蓮の花を聞かせるような力を持っている」との言葉は、美術教育の果たす役割や使命と、そのことに携わる我々美術教師に大いなる勇気を与えてくれます。
 本会においては、県下の美術教育の現状や課題を会報等により発信するとともに、美術教育の新しい活動や見方・感じ方を願い、十数年ぶりに美術資料「長野県版」の全面改定に取りかかっています。

1 中学生の目線にたってみることができる、鑑賞資料となるように発想を転換する、
2 提案型の構成にする
3 造形活動や表現をとおして、地域とかかわり地域が活性化する

上記のようなコンセプトをもとに、編集委員を組織して内容の検討・吟味、資料の収集、絞り込み、構成等を経て、現在は具体内容の資料収集の段階に入りました。会員の皆様には、昨年から掲載対象物の推薦等で大変ご協力をいただきありがとうございました。今年度中に改訂にこぎ着け、来年度版から新たな美術資料として出発したいと努力しています。

 さて、一方において美術教育にかかわる昨今の状況は、教科時数の問題はもちろんですが、実に厳しい状況にあると思います。以下、課題と思われる点を列挙してみます。
・中教審の論議の中で出された芸術科目の選択教科論は、一端白紙に戻されてはいるが先行きは不透明。
・学習指導要領の改訂に伴う選択教科の廃止。それに伴う授業時数の実質削減と美術教師の減少。(長野県において新規採用は、ここ2,3年2名程度)
・学習指導要領の改訂における共通事項のねらいと指導や評価のあり方。
・山間地小規模校における美術教師の不在、あるいは講師の兼務による授業。近い将来正規教員による兼務も検討されつつある県の状況。
 等々、実に厳しい状況であると考えますが、県下の美術教育にかかわる先生方が、互いに情報を提供し共有することを通して、新たなる一歩を踏み出すことが大事ではないでしょうか。学校美術館構想やキッズ造形フェスタなど、地域と連携して新たな取り組みをして頑張っている仲間がたくさん出てきています。美術館も新たな鑑賞を提案しています。中学校の美術の先生が地域の学校の図工・美術教育の発信者として、美の教育に自信と誇りを持って自分の足下からとにかく具体的に動こうではありませんか。




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