「専任教育コーディネータ」の設置
    山田弘明 大学非常勤講師

 工学部の化学系学科で専門基礎科目としての物理学を担当しているが、講義内容の工夫では補えない問題点が存在すると感じている。カリキュラムの構築には議論が重ねられているものの、実際の講義内容や学生の習得度に関し、全体を見渡し知悉している担当者は誰一人いないのではないかという点だ。特に基礎科目の数学・物理は非常勤や他学科等に任せることも多く、内容の連携が十分とは言えない状況である。実際、入試やカリキュラム、リメディアル、Jabee、学年担当等の各担当者は学科毎に存在するが、高校理科・数学の全内容と大学での(基礎)教育全体を内容にまで踏み込んで見渡せ、学生の実際の習得状況を把握できる教員がいないと、多様化する学生に対する教育が有機的に機能しないのではないだろうか。
 このような事態の抜本的な改善のためには、専任の「教育コーディネータ」が学科毎に必要なのではないかと考える。本来は講義担当者同士が年に何度も議論し会う場を持ち、講義内容について良い意味で相互干渉し、ネットワークを構築しておくことが教育上は最善と思うが、現実には難しい。そこで教育コーディネータを配置しハブとして機能させてはどうか。更にコーディネータの役割として、「学生カルテ」の作成という役割も考えられる。学年担当ならば各学生のシラバス上の履修内容は把握しているだろうが、現実には4割程度の習得率の学生も珍しくはない。コーディネータが把握する「カルテ」は履修科目と成績のみでなく、各学生との対話や、必要に応じ試験問題や答案自体も確認して作成されるものであり、講義担当者との教育改善に関する様々な議論にも役立つ。更に、講義内容を丸投げされがちな非常勤講師も、教育コーディネータとの情報のやりとりによって教育上の問題点も議論でき、縦割り運営の弊害も改善されるのではないだろうか。

(2010/07/19)

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