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<ディプロマミル> 
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先月(June, 2005)NHKの番組で、いわゆるディプロマミル(ディグリーミル)とよばれる「大学」について取り上げていた。興味深かったので、簡単にまとめておくことにする。実際、e-mailを使う方は、「...ドルでDiploma取得」に関するメールを幾度となく受け取った事があると思う。(注意:独国でのDiplomaは日本での修士の学位に相当するものであり、ここで記す米国でのものとは異なる。)


公的な認定を受けずに、ほとんど、あるいはまったく学習・学術的研究をしなくても学位を授与する組織のこと。ほとんど通学の必要も無く、特徴として、人生経験を単位として計算する点が挙げられる。また、外国からの学生を集めるなどの目的で、学名を名の通った有名大学に似せているものも多い。 
日本では大学は文部科学省によってのみ認可されるが、米国では自由を尊重する歴史的背景から、政府公認の民間団体が認定をする認定校制度を採用しているため、このような問題が存在する。また、多かれ少なかれ学位の有無で給与・待遇などがはっきり区別される学歴社会が現存する、という事情もある。学位があるだけでディプロマミルに支払う金額を超えた収入が約束されるため、特に専門職に就く人や大学教員の入学者が多い。ただし、ディプロマミル自体の存在は違法ではないため、取り締まりは非常に困難であるようだ。毎年、高額な学資ローンを取得した後に入学先がディプロマミルであることを知り、取り消しが認められず泣き寝入りするケースが後を絶たない。

 ディプロマミルでない大学を見分ける場合に、いわゆるRegional Accreditation
(RA)と呼ばれる6団体による認定があれば問題ない。
* Middle States Association of Colleges and Schools(MSASC)
* New England Association of Schools and Colleges(NEASC)
* North Central Association of Colleges and Schools(NCACS)
* Northwest Association of Schools and Colleges(NASC)
* Western Association of Schools and Colleges(WASC)
* Southern Association of Colleges and Schools(SACS)

例)(もちろん以下のような有名大学も認定を受けている)
ハーバード大学…NEASC
コロンビア大学・・・MSACS
スタンフォード大学・・・WASC
フロリダ大学・・・SACS

 また、メディカルスクール、ロースクール、およびビジネススクールといった大学院の入学には、それぞれ専門の全国組織が認定した大学の学位を取得していることが必要になる。オレゴン州やミシガン州では、未認定大学の学位を公的に使用することを禁じている。
 ただし、すべての未認定教育機関がディプロマミルであるとはいえず、カリフォルニア州では州独自の認可制度を持ち、認定校と同様の権威があるとしている。
かつてはキャンパスの存在の有無などでディプロマミルは比較的容易に見分けられたが、遠隔教育の普及によって判断が難しくなっている。最近は法規制の緩い国外に本部を置く学校も増えている。

日本では大学の設置に文部科学省による認可が不可欠であり、また学位と社会的な地位や収入が米国ほど連動していないために、国内ではこのような問題はおこりにくいと考えられる。ただ、大衆教育に伴う教育の質の低下という点に限っては、最低4年間という時間がかかるとはいえ、ディプロマミルと内容的には変わらない状況にある大学、短大も存在するのかもしれない。
(2005.6記)