食農問題・環境問題・教育問題 (2008.11, 2009.8記)


最近流行りの問題を並べてみた。もちろん、マスコミに影響されずに自ら物事を考える人々にとっては何十年、何百年前から存在している問題である。簡単にこれらの問題を記せば、以下のようにある。

・食農問題:現在、いわゆるカロリーベースでの食糧自給率が40%であり、中国やオーストラリアや米国などに頼らず、これを上げていかないと将来大変な事態になるという問題

・環境問題:いわゆる化石燃料の使用により、二酸化炭素などの温暖化物質の濃度が上がり、地球上の気温が上昇しているという、地球温暖化問題

・教育問題:「ゆとり教育」推進に基づく、学習指導要領などの改訂により小、中、高の学習内容が削減され子供の学力が低下しているのではないか
という問題

それぞれ興味深い大きな問題であるので、個々の問題の内容について論じるのは別の機会にする。ここで指摘したいのはこれらの問題の類似性である。つまり、少し前までそれ程意識されていなかったにも関わらず今ではそれが当たり前であり、なんとか解決しなければいけない問題であるかのように多くの人が思っている点だ。問題の重要性がそうさせたという一面はあるが、政府が動き、マスコミで取り上げられ、予算も付き瞬く間に広がったこと(常識)は、疑ってかかるに越したことはない、というのが私の意見だ。

幸いそれぞれの問題において、ある程度説得力のある反対論や懐疑論が出ている。例えば、浅川氏の「農水省 食料自給率のインチキ」で示すような、自給率をわざわざ「カロリーベース」表示するのは、国民の不安を仰ぎ農業政策に予算を誘導するためである、という見方もある。実際、金額ベースで表示すれば先進国で一番自給率は高くなる。 また、丸山氏の主張するように、太陽の黒点活動などのデータからも今後地球は寒冷化する可能性の方が大きい、という見方もある。学力問題でいえば、神永氏が大学入試のデータで示すように、学力低下を示す明らかなデータはどこにもなく、多くの大学教育者の目の前にいる学生のレベルが下がっているだけだ、というものである。つまり、大学進学率を考えれば当たり前のこと。

もちろん、反論として持ち出すデータの信ぴょう性など様々な議論はあるが、いつでも同じデータから逆の結論を出すこともできる以上、様々な反論が存在すること自体に意味がある。逆に、右にナラエの論には注意が要る、常に疑うべきだ。浅川氏の見方をすれば、国民のため、国益のためを装いながら、食農問題では農林水産省、環境問題では環境省、教育問題では文部科学省に関連した予算の配分を増やせ、省益に繋がっている。


●浅川芳裕 「農水省 食料自給率のインチキ」文藝春秋 2009年1月号
●丸山 茂徳「地球はこれから寒冷化する」 文藝春秋 2008年5月号 
●神永 正博 「理工系離れの原因は何か」大学の物理教育 14-3 (2008)
●神永 正博「学力低下は錯覚である」森北出版 (2008)
●竹内 洋 「学問の下流化 」 (中央公論新社 2008)

戻る