「電磁波」


自分の身の回りの電磁場環境が多少気になっていたので、数年前、ロバート・O・ベッカー著(船渡俊介 訳)「クロス・カレント」(新森書房 1993)をコピーして読んだ。そのときから、自分でも計測してやろうと思い、交流磁場とマイクロ波が測定できる「セルセンサー」を購入した。

使用に関する詳細は省くが、http://www.otona.ne.jp/sokuteiki.htm に説明がある。これは、0-5MG(G:gauss)まで測れる。磁界(磁場)の強さを、単位面積あたりの磁束密度(磁力線の束の密度)で表すとき、このガウスを使う。磁束とは、磁場の中にある一定の面積を考え、その面積を貫通する磁力線の垂直成分を足し合わせたものである。(他に、磁界(磁場)の強さをエルステッド、アンペア毎メートルという単位での表記もある。http://www.magnix.com/tanikansan.htm 参照。)

ここでは細かいことは横に置いておき、この測定器に記された警戒磁場強度でピーピーと警戒音が鳴る、という機能をのみを用いる。この警戒音がどれ位の距離で鳴るかを、身の回りにある日用家電品で大雑把に測定してみた。

==========<結果>============================
ラジオ        25cm
髭剃り        10-15cm
テレビ        上50cm 後ろ40cm 横60cm
ウォークマン     2cm(一部)
鼻毛カッター     10cm
ドライヤー      20cm (1200W、600Wによらず)

蛍光灯        10cm
電球スタンド後方   3cm
ファンヒーター液晶部 20cm

ノートパソコン後方  5cm
インクジェットプリンター なし
デスクトップ      前なし 横5cm 後ろ20cm 
スピーカ        後ろ20cm
エアステーション   上30cm まわりはなし

電子レンジ液晶部    20cm
湯沸しポット液晶部   5cm
炊飯ジャー         なし
冷蔵庫           なし
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注:「なし」は鳴らなかったことを示す。

体に近づけるもので、強度の大きいものはドライヤーや髭剃りであり、他は、電子レンジやテレビと、予想にたがわぬ結果を得る。本当は「携帯電話」なども測ってみたかったが、所持していないため行っていない。電磁波の計測用機器も市販されているが、私の購入したものの2-3倍の値段なので断念した。より安価におおよその磁場の強さを見積るには「方位磁石(コンパス)」(100円)を使えばよい。その指針の回転の程度でわかる。

さらに、生物への影響を考えるときは、器具を固定し、計測物を動かして影響をみるほうが、より現実的かもしれない。実際の生体は動いている。文献参照。

航空機の中での電子機器の使用禁止、電車の中での携帯電話の問題、はては主要場所などに設置が進んでいる無線ランのhotspot等、今後、電場、磁場と生体に関する問題は益々、深刻になるのではなかろうか。 さしあたり、携帯電話の使用問題は喫煙問題と類似の方向に進むことが考えられる。電車の中では「携帯車両」、建物では「携帯場所」と、空間を分けていくことになるだろう。ただ、下手をするとタバコと異なり、山の中にいこうと逃れられない公害問題となる可能性を秘めている。


参考文献:
物性研究 82, 2004年4月, p45− 研究会報告「電磁波と生体への影響」
物性研究 83, 2004年11月, p189− 坂田泰啓 「開いた空洞系における電磁波の動力学」
(2003/4/1記、2004/11/10追加)

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