「アテネ五輪愚考」

アテネオリンピックでは「日本はメダルラッシュ」と、マスコミは連日報じた。実際、金メダルの数も総メダル数も日本としては過去最高であり、初日から連日の日本選手の活躍を深夜まで見いった人も多かったに違いない。
 ここでは、少し視点を変え、他国と比べて日本の活躍の度合いを概観し、国の特徴が伺えるかを大雑把に見ることにする。簡単のため、単純に国ごとにどれだけの人口でメダルが何個かをその指標とする。つまり、次の二つだけを指標としておく。

指標A=人口/金メダル数
指標B=人口/メダル総数

単純にいえば、メダル獲得効率の逆数であり、指標値が小さいほうがメダル獲得効率が高い。人口は、http://www.stat.go.jp/data/sekai/にある世界の人口(2000年のデータ)を用いた。(関係ないことだが、http://www.ibiblio.org/lunarbin/worldpop にある現時刻での世界人口の増える様子をみていると、なにやら恐ろしいものを感じてしまう。)これによる主な国の結果は以下の表のようにまとめられる。


国名      人口(千人) A    B    指標A  指標B
==================================================
ドイツ     82,017  14  48    5,858   1,709
フランス    58,521  11  33    5,320   1,773
イタリア     56,306    9   31    6,256   1,816
イギリス     58,789    9   30    6,532   1,960
スペイン     40,847    3   19  13,616   2,150
オランダ     15,010    4    22   3,753     682

ロシア       147,022  27   92    5,445   1,598
ウクライナ    48,416   9    23    5,380   2,105
ルーマニア   22,814   8    19    2,852   1,201

カナダ         30,007   3    12   10,002   2,501
アメリカ      281,422  35  102     8,041   2,759

日本          126,926  16   37     7,933   3,430
中国        1,295,330  32   63    40,479 20,561
韓国            45,989   9   30      5,110   1,533

キューバ        9,724    9   27     1,080    360
オーストラリア 17,892  17  49      1,052   365
ギリシャ        10,260    6  16      1,710   641

(注意)A:金メダル数、B:メダル総数
    指標A:金メダル1個あたり人口(千人)
    指標B:メダル1個あたり人口(千人)

このズボラなデータだけでもいろんなことが伺える。たとえば、「ヨーロッパの安定した先進国やロシア、ウクライナはおおむね指標の値が近い」、「オランダ、ルーマニアのメダル獲得効率が高い」、「カナダや米国はほぼ同程度で、ヨーロッパの安定した先進国よりやや劣る」、「キューバやオーストラリアのメダル獲得効率が最も高い」、「開催国ギリシャのメダル獲得効率がキューバやオーストラリアについで高い」、「アジアでは韓国のメダル獲得効率が圧倒的に高く欧米先進国以上で、中国は人口が多いゆえ効率は落ちる」など。

さて、日本はどうか。マスコミは韓国のメダル数が少なく、日本はメダルラッシュと報じるが、実は日本のメダル獲得効率は韓国よりずっと低く、いわゆる先進国のなかでも最下位になるのである。逆に、近い値は米国ゆえ「アメリカ並み」ともいえるのだが。韓国のメダル獲得効率が圧倒的に高い原因は「徴兵制」があるからか?

ここでは、夏の五輪のデータのみを用いたので、当然偏っている。興味のある方は、冬季五輪のデータを加えるとよい。より公平なデータが得られるに違いない。キューバやオーストラリアは冬季五輪のメダルは少ないだろうし、北欧の国のメダル獲得効率が上がり、結果はよりならされたものになるであろう。

また、中国はいまでも、都市部の人口だけで計算すると一桁くらい異なるだろうが、北京五輪では効率が急上昇するに違いない。もし国あたりの消費エネルギーで効率を計算すれば米国が並外れて効率が悪く、アフリカやアジアのイスラム教の国々の効率が高いという結果がでるかもしれない。因みに、米国の一人当たりの年間エネルギー消費量は他の先進国の2倍以上である。(P.B.Weisz, Physics Today, July 2004, 47)

まあ結局は、人間みんなチョボチョボか、、、。


過去の五輪のデータや男女別のデータなどでその国の経済などの発展度合いとの関わりが見えてくるかもしれない。どなたか調べてくれると有難い、卒論くらいにはなるかも、、、。

しかし、日本の柔道が強いのはいいのだが、どうして柔道をオリンピック競技にしメダル、メダルと叫ぶのかはまったく理解できない。柔道の他に、(韓国、北朝鮮の方は異論もあろうが)日本の空手道を元にしたという「テコンドー」も「道」がつくが、これらは「体力や技術」を求めるものでなくて、「道」を求めるものではないのか?(2004/08/30)

やはり、
http://www.simon.forsyth.net/olympics.html

という統計が存在した。  しかし、dopingの問題は深刻だ。アテネ五輪ではメダリスト7人を含め、計26人のdopingが発覚した。また、アテネ五輪の参加アスリートへのアンケート調査では、なんと52%が「5年後に死んでも金メダルがとれるならdopingをやる」と答えたとか。
gene doping(2004/09/4)

戻る