柿(学名: Diospyros kaki)について(2005.12記)

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柿の種類
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渋で分類したもの
1.完全甘柿・・・「富有」など、種や褐変(ゴマ)の有無にかかわらずまったく渋の無いもの。
2.不完全甘柿・・・種ができるとその周辺から全体が甘くなるもの。甘い部分が褐変する。
3.不完全渋柿・・・種ができてもその周辺しか甘くならないもの。
4.完全渋柿・・・褐変せず、完全に渋いもの。「愛宕」など。
ただし、「不完全」の2区分については明確な基準は無い。

柿の主な栽培品種(生産量順 平成16年度は全国出荷量185,000トン)
「富有」 (55,500t)岐阜県原産の完全甘柿。果肉は軟らかい。出荷は11月で、主に福岡県、
岐阜県、奈良県で生産されている。
「平核無」 (30,400t)新潟県原産の渋柿。生産地は和歌山県、山形県、新潟県など。詳しくは後述。
「次郎」 (11,400t)静岡県原産の甘柿で、果肉は固い。主に愛知県と静岡県で生産。
「刀根早生」(42,900t) 平核無系の早生品種。和歌山県で60%を生産。
「西村早生」 (6,020t) 主に福岡県、岐阜県で生産される甘柿の早生品種。

●未熟な渋柿から抽出した「柿渋」は凝固しやすい性質があるため、日本では平安時代から
補強・防水用の塗料として広く利用されてきた。紫外線や温度の働きにより酸化することで
茶色に発色する。主な使用用途:漁網、団扇、番傘、建築用、醸造における絞り袋など。

●新潟の「八珍柿」について
種が無いことから「新潟七不思議」に次ぐという意味で命名された八珍柿は、品種としては
渋柿の平核無(ひらたねなし)にあたるもの。新潟県新潟市(旧新津市)古田に残る原木は
樹齢約320年の巨木で、県の天然記念物に指定。明治初期に山形県に苗木が持ち込まれ
「庄内柿」、昭和に入ってからはこれが佐渡に渡って「おけさ柿」として親しまれている。
渋柿の栽培品種は主にこの平核無と奈良県原産の刀根早生であるが、刀根早生は平核無の
突然変異であり、品種登録は1980年。


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渋抜きについて
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柿の渋とは水溶性タンニンのことであり、渋抜きとは実際に渋を除去するのではなく、
渋味を感じない不溶性タンニンに変化させることである。タンニンはアセトアルデヒドと
結びつきやすい。皮を剥いたり呼吸を妨げることで果実の糖がアルコールさらにアルデヒドへ
と変化して、それがさらに水溶性タンニンと結合し、分子量が大きくなることで渋味を感じなくなる。
甘柿は手を加えなくても果実中の酵素の働きでアセトアルデヒドが生成されるものである。
一般に「ゴマ」と呼ばれる黒い部分が不溶性のタンニンである。人為的な渋抜きはどれも柿の
呼吸を妨げる方法で、地方によっては家庭で燻煙や凍結による渋抜きも行われている。

渋抜きの方法など
1. アルコール脱渋
ヘタの部分を度数30%前後の酒類(焼酎、ブランデー、ウイスキーなど)に浸し、密閉保存する。
表面に霧吹きで酒類を吹きかけてもよい。5日〜1週間程度で渋が抜ける。

2. 炭酸ガス脱渋
商業用では炭酸ガスで充満させた部屋に果実を密閉して行う。家庭では果実の2〜3%程度の
重量のドライアイスとともに密閉しておくと5日前後で渋が抜ける。果実が直接ドライアイスに触れ
ないように注意。

3. 加熱による脱渋
鹿児島県の紫尾温泉では、温泉に渋柿を12時間浸して脱渋したものを「あおし柿」と呼んで
販売している。家庭でも30〜40度程度のお湯に半日程度漬けることで短時間での渋抜きが
可能だが、日持ちしない・変色するなどの短所もある。また、干し柿で有名な長野県伊那地方
の「市田柿」は、古くは焼き柿として食べられていた。

4. 干し柿
皮を剥いた柿を天日干しにしたもの。内部が生乾きのものを「あんぽ」、中まで乾燥したもの
を「ころ」と呼び区別する。「ころ」は主に酢の物・和え物などの調理用。

5. 熟柿
内部がどろどろになるまで木に実らせておくと渋が抜ける。

6. 味噌漬け
渋柿の皮を剥き、4つ割にして味噌に漬ける。3週間から1ヶ月ほどで果肉に透明感が
出たら食べ頃。

7. 冷凍柿
幾つかに分割しラップに包み、冷凍庫で凍らせる。溶かしながら食べるとき、解けは部分の渋は
全くなかった。冷凍のままの部分はまだ多少渋みが残った。


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【実験1 ドライアイス脱渋加工】
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1. 不完全甘柿のうち、ヘタ周辺を小さく削ってみて褐変のないもの(渋柿)を数個選ぶ。
比較のために完全渋柿も1つ入れる。
2. 1を新聞紙にくるむ。
3. 大さじ2杯程度のビーズ状ドライアイスとともにビニール袋に入れ、密閉。
4. バケツに入れて蓋をする。
5. 4日目に更に大さじ2杯程度のドライアイスを追加。
結果:不完全甘柿は5日目には完全に脱渋されていたが、完全渋柿はまだかなり渋が残っていた。


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【実験2 アルコール脱渋加工】
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1. ホワイトラム酒(45度)を小皿に出す。
2. 渋柿(完全渋柿・不完全甘柿)のヘタ部分をラム酒に浸す。
3. キッチンペーパーをラム酒に浸し、乾いたキッチンペーパーで包んだものとともに2をビニール袋
に密閉。
結果:5日目には完全に脱渋。


【謝辞】
十分な量の柿が取れる4本(3種類)の柿木を残してくれた先祖と両親に感謝する。(おそらく、
一本の柿木で4−5百個の柿の実がとれるが、梯子と高枝切り鋏を使ってもとても取り切れないし、
食べきれない。)
また、この渋抜き実験に積極的に協力してくれた妻に感謝する。