「日本に健全な森をつくり直す委員会」提言

 

「石油に頼らず、森林(もり)に生かされる日本になるために」

                            2009年9月18日

 

 

「日本に健全な森をつくり直す委員会」

 

2008年7月発足。全国で、委員会とシンポジウムを重ね、「21世紀を森林(もり)の時代に」していくための世論を形成することを目的に活動。各界からオブザーバーを委員会に招き、各新聞社の論説委員会にも参加を要請している。俗称「養老委員会」。

 

構成メンバー  委員長   養老 孟司[東京大学名誉教授]

                副委員長  C.Wニコル[作家]

 

 委 員 (五十音順)

 天野 礼子[アウトドアライター]              立松 和平[作家]        

 尾池 和夫[前・京都大学総長]            田中 保[田中静材木店代表]

 岡橋 清元[清光林業 第17代当主]             中島浩一郎[()銘建工業代表]       

梶山 恵司[富士通総研主任研究員]           藤森隆郎[(社)日本森林技術協会技術指導役]        

川村  誠[京都大学准教授]                真下正樹[技術士・森林部門]                  

白山 義久[京都大学フィールド科学教育研究センター長] 山崎道生[(株)山崎技研代表]

高井 洋一[ポロBCS(株)代表]            湯浅 勲[京都府日吉町森林組合参事]

竹内 典之[京都大学名誉教授]       

                     


提言の背景


T.「低炭素型産業」による成長戦略が必要とされている

・産業革命以来続いてきた「資源・エネルギー大量消費」の産業構造が、いまや限界となっている。

二酸化炭素の大量排出による温暖化効果では地球そのものも持たなくなってきている。

・“持続可能”な形で資源・エネルギーを利用することによって、二酸化炭素の排出量を削減する「低炭素型産業構造」へと転換し、これを「成長」と「雇用」の源泉とすることこそ、“日本の成長戦略”である。

・低炭素型産業構造の一つのあり方が「小規模分散型」で、地域資源を利用する産業。

 その典型が、林業を起点とする木材産業集積。製材、合板、住宅、家具、関連機器メーカー、バイオマス等々と、裾野が広い。しかも、木材産業集積は、資源に近いところに立地するので有利。

・森林資源は、「再生可能資源」であり、二酸化炭素の削減に貢献する。

・「中央に集中し、輸出産業を育成、地域を公共事業で支えてきた」戦後の発展パターンは大きな見直しを迫られており、「内需・地域振興型」の新たな成長戦略を描く上でも、林業を起点とした木材産業集積は、これからの時代を象徴する基幹産業である。

・一方、地球上で森林は今後ますます貴重なエネルギー源となり、森林率の高い日本はこれを有利とする成長戦略へ移行するべき時である。


U.日本の森林・林業のこれまでと現状

  ・日本の森林面積は2500万ヘクタールと、国土面積の三分の二を占める。森林の総蓄積は44億立方メートル、年間成長量は1億立方メートルに達し、世界トップクラスであり、その可能性は極めて高い。

    たとえば、森林面積が1000万ヘクタールと日本の人工林とほぼ同じ面積のドイツでは、年間6000万立方メートルもの木材が安定的に生産され、一大産業群を形成しており、その雇用は100万人と、自動車産業の70万人をも上回るほどである。

    これに対し、戦後しばらく6000万立方メートルで推移していた日本の木材生産量は、60年代半ばをピークに減少。現在では、2000万立方メートルとドイツの三分の一しかない。

  ・日本林業の不振は、戦後の過伐によるものだった。1960年代半ばまでは年間6000万立方メートルの木材生産ができていた。当時の蓄積は20億立方メートルにすぎず、30年で全森林を伐り尽くす勢いでやっていたことになる。伐採跡に植林し、現在の1000万ヘクタールにおよぶ人工林資源に築き上げたが、これまではそれが成長時期にあった。

  ・また、石油にエネルギー源が移行したことにより、薪炭林材利用が激減したことも林業の衰退に拍車をかけていた。


V.日本の森林の可能性

  ・植林開始から50年を超える林分もこれからは急速に増えることになり、戦後造成した人工林資源は、これからがいよいよ「利用」段階に入る。つまり、「日本林業は数十年にわたり木を育てる保育の時代にあった」ということだ。蓄えた資本をもとにこれからは、その成長分を収穫できる段階に入ろうとするところにあると国民全体で認識すべきである。

  ・木材生産を目指す森林は、それを健全に維持するために成長量の七〜八割程度を定期的に伐採する必要があるが、蓄積および年間の成長量からすると、これからは最低でも5000万〜6000万立方メートルの木材生産が必要となる。つまりは、ドイツに匹敵する可能性があるということだ。

  ・しかしながら、このチャンスの実現のためには時間が足りない。

   ・このままではこうした林分が急増してくるからだ。しかも、資源が「活用」できる段階に入りつつあることから皆伐が拡大している。ひとたび皆伐すれば、巨額の再造林経費がかかり、「持続可能林業」にはならないことをよく認識すべきだ。

 ・つまり「戦後苦労して築き上げた森林資源を将来につなげるか、それとも森林荒廃によって資源利用もままならないまま朽ち果てさせるのか」の瀬戸際にあるのが現状なのである。

 

W.めざすべき森林の姿

   ・「路網整備」して、「間伐」を繰り返していけば、木も太くなり、生産性のみならず品質も大幅に向上する。この二つにいそぎ取り組むことが、人工林資源を将来につなげる唯一の道であることを認識すべきである。

   多様な木材需要にもこたえることが可能となり、地域における木材産業集積をも促す。

  ・木は太れば、枝が大きくなり、枝葉の間隔があいてくるので木漏れ日が差し込み、明るく、健全な森となる。少しずつ更新し、一定の面積の中に、大きな木も若い木も存在する森づくりとなり、“針広混交林化”を進めることも可能になる。

  ・天然生林についても、北海道の東大演習林や長野の「アファンの森」のように人が手を加えることによって、蓄積が高く、多様性に富んだ森林にしていくことが可能となる。これは同時に経済的にも価値の高い森林となり得る。

  ・一方、国有林においては、“自然の鏡”となる自然のままの天然林も適正に配置すべきである。

   ・我国の2500万ヘクタールの森林をグランドデザインするには、「健全な林業」がバックにあることが基本である。これがあってはじめて、森林管理の理論・技術が発進し、それを支える人材も養成されてゆく。


X.労働集約から知識・技術集約へ

   ・これからの森林・林業は、労働集約の保育の段階とは抜本的に異なり、高度な知識・技術・経済力が要求される。

  ・地域森林のグランドデザインやそれぞれの林分に応じた森づくりを設計し、現場に適切に発注する森林管理の専門家の養成が急務である。

  ・林業の基本知識はもちろん、土壌や生態系などに配慮して高性能林業機械を効率よく稼働させる現場技術者の養成もいそがれる。

  ・作業システムの向上と共に、日本の地形でも使いやすい高性能林業機械の開発を政府が奨励するべきである。

   ・高齢化や不在村化などで担い手とはなりえなくなった所有者がほとんどとなった現在、所有者が林業の担い手となることは困難であり、森林管理の専門家がこれをサポートすることが不可欠である。

   ・現状では、森林管理の専門家や現場の役割分担・連携があいまいである。

   ・所有者サポートは森林組合に期待された機能だが、現実の森林組合は“公共事業依存型”で、民間の林業会社と競合してしまっている。この結果、民間の林業会社は、事業を安定的に確保することも困難で、設備投資もままならず疲弊する一方である。


 

はじめに

 20世紀は「石油の時代」だった。しかし、現在までに産油国の約60ヶ国がすでにピークアウトしている。

 石油がピークアウトすると、日本の森林(もり)は消えてしまう心配がある。江戸時代には燃料として猛烈なスピードで木が伐られたため丸裸の山が日本各地にでき、川に水害を繰り返させる要因となっていた。

日本人は何でも徹底的にやってしまう。だから私たちは、森林(もり)を使い果して滅びた文明が繰り返した愚を犯さないよう、「石油が使えるうちに石油を使ってやらなければならない技術開発はやっておき、森が消えないように、どのように森を保全維持管理しつつ森に生かしてもらうか」を、今のうちに考えておこう。

 

 一方、「温暖化防止キャンペーン」が世界中で繰り広げられているが、「石油の元栓を閉めろ」と政治のリーダーたちの誰一人言っていないのはおかしい。我々「日本に健全な森をつくり直す委員会」はそれを言い始めることにした。せめて一年に1パーセントずつでよいから、日本中で石油使用を減らそうではないか。

賢明な政治家は、これに今すぐ取り組んでほしい。そして国民も、「石油の使い方」を一人一人が考えよう。

 我々「日本に健全な森をつくり直す委員会」は、石油使用を減らしながら、今は豊富な自然エネルギーである“森”をこれからはもっと大切に使わせていただいて、「林業を業(なりわい)とする森林国」として生き、世界からも尊敬を受け得る国となるための努力をすることを、わが国民および国のリーダーたちに提言したい。

 

私たちの日本列島は、四つの海に囲まれ浮かぶ“緑の列島”であってきた。

 海から立ち上る豊かな水蒸気が、今も国土の三分の二もの森林率を誇る森を残してくれている。

 古来より祖先たちは「木の文化」といえる文明をつくり出し、精神の拠り所である神社・仏閣も、住居も共に木で造ることを好む国民として生きてきた。現在国内で使用している木材のうち八割を外国産材に頼ってまでも木材を使っている現状は、わが国民が「木を好む心」を自らのDNA内に知らず知らずに持っているからだろう。しかし、これだけの森林資源がある状況を生かす努力が、今までは足りなかったのではないか。

 

我国の林野行政は、明治維新時にドイツの経済効率一辺倒の森づくりを模倣した。

戦後の復興期から高度経済成長期にかけては、木材需要の増大に対応するために大径木の広葉樹天然林や、50年生以上の針葉樹人工林をほとんど伐ってしまった。いそぎ大造林が行なわれたが、それがまだ成長期にある間に売却できる木材が少なくなり、外材を大量に輸入するという産業システムをつくり上げてきて、現在までの“日本林業不在”の年月があった。

これまでは年間1億〜8000万立方メートルの木材使用のうちの八割ほどを外材で補ってきた数十年であったが、戦後の造林材が今は使い頃に育ってきており、この機に森林(もり)とのつきあい方を大きく変革すれば、森林率にふさわしい「森林立国」に立ち帰ることができるだろう。

日本人には、「手入れの思想」というものが備わっていたと思う。里の近くに雑木林をつくり、熱源にしたり、落葉は畑の肥料にしたりして、何ひとつ無駄なく使うために、日ごろの「手入れ」がよくなされていた。それを見て百年前に西欧人は感心してくれ、アフリカの人が今、「“もったいない”を思い出して使え」と教えてくれている。私たちは、本来の日本人に立ち帰ればよいのだ。そのためにも、「森へ向かおう」。

 

日本の森林は今、これを将来にわたって持続可能な形で利用してゆくことができるのか、それともこのチャンスを逃すことになるのかの瀬戸際にあり、日本国民は早急に行動に移らなければならないと我々は心得る。

 


提言「石油に頼らず、森林(もり)に生かされる日本になるために」

 

T.石油に頼らず、「木」を使うことによって、「森林(もり)」を生かし、

  森林(もり)に生かされる「森林(もり)の国」に、日本をつくりかえよう。

  「低炭素社会構築」に、国民の一人一人が参加できる国にするのだ。

1.これから50年、日本中で「石油使用」を毎年1パーセントずつ減らしてゆこう。

2.そのためにも、「現在の森林率くらいはこれからも維持してゆく」と決めておこう。

木材生産を求める森林(主に人工林)と、自然の力をできるだけ生かしながら木材生産も求めてゆく森林(主に天然生林・天然更新によるが収穫などの人手が入る)、特別に必要がない限り手をつけない森林(天然林)を区分し直し、わが国の森林全体をとおして“生物の多様性の保全”と水土保全が図られるようにしよう。

    多様な生物と共存できるように森林(もり)をつくり直し、災害に対して強く、水資源の安定的供給にも優れた森林につくってゆくのだ。

 

U. 日本林業にかつてない“チャンス”が来ていることを認識し、それを生かそう。

  「10年間で、年間5000万立方メートルの木材を生産できる体制をつくりあげ、

林業を2兆円のわが国基幹産業に立て直そう」。

森林の保全には、林業の活性化と農山村の復興が必要である。

   列島の森林面積2500万ヘクタールの年間成長量はおよそ1億立方メートルは優にあるが、現在自国では需要8000万立方メートルのうち2000万立方メートルの材しか生産で   きておらず、8割を輸入している。

これからの10年間で、「年間5000万立方メートルの木材生産が可能」となる日本にしよう。すると農山村も復興するだろう。「森へ向かいたい」と希望する若者やI・Uターン者が“木材生産”にかかわり生活してゆける手法を編み出すのだ。

使用する木材の乾燥を今でも木質バイオマスエネルギーでなく石油で行なっている森林国はわが国だけである。これからますます進めなければならない間伐で出てくる林地残材や未利用材を、エネルギーとしても100パーセント使いきれるような“社会システム”を農山村でつくり上げると、林業・木材産業・流通を含めて「2兆円産業」が成立する。

すると間伐が進むために、森林(もり)も元気になる。

 

V.新総理の下にあらたな「諮問委員会」をつくり、総合計画を一からつくり直そう。

   わが国には今、本当の意味での「森林(もり)づくり」のための百年、五百年の計画がない。

産業革命時に森を破壊し尽くしてしまったドイツの今ある森林はすべて、反省のもとに「つくり直した」人工林である。明治期の日本は、この「つくり直し」初期の経済効率一辺倒の森づくりを模倣していた。

   ドイツではおよそ百年間、全土で「森林再生」と「林業再生」が取り組まれ、1000万ヘクタールの森をつくり直してきて、「森を使って生かす」森林国となることができている。「多様な森づくり」に取り組んで、針葉樹・広葉樹混合の、天然更新を重視する大径木づくりが行なわれており、それが林業の効率的な経営につながっている。


1000万ヘクタールといえば、わが国の人工林面積と同じである。百年をかけてつくり直す気になれば、わが国も同様の森林政策を営めるということではないか。

“政権交代”という機会に、林野行政をまったく一から見直そう。

それには、現行の「森林・林業基本計画」、「保安林制度」、「補助金制度」のいずれもが、明治の混乱期や戦後の資源造成期につくられた制度のままであることを認識し、これらを全面的に「つくり直す」ことから始めるべきであろう。

今後、官民一体となって、森林(もり)のために国民一人一人のレベルまでが“森仕事(森のために何かの働きをすること)”ができる日本にするためには、これまで林野行政へ「耳の痛い」忠告をし続けてこられた森林研究者たちの意見も反映することが賢明な手法である。

 

W教育制度の確立をいそごう。

 1.「森林組合」の再教育、

   「人材育成のための学校づくり」をしよう。

    ドイツには、国にも州にも「フォレスター(森林管理の専門家)」がいて、国・州の50年向こうの森づくりの計画を、地域の役人や個人所有者と一緒に考え、指導している。

    日本では、森林の総合計画や地域の森づくり、個人所有者へのサポートといった、ドイツの「フォレスター」に要求されている機能を果たす行政や人材がない。「森林組合」が本来はその役を担うべきであったが、長年林業が衰退していたために安易な公共事業に依存する体制が蔓延していた。

近年、林野庁提案の国産材使用のための施策をきっかけに、当委員会委員ら数名が「全国森林組合連合会」らと協働して森林組合改革を行なってきているが、教育のための人材が不足していることが痛感されている。林業国としてのノウハウや理論・技術の蓄積がすでにあるヨーロッパと人材交流を明治維新時のように大胆に図り、森林管理の専門家と現場技術者が養成できる学校をつくろう。

    人材は早急に必要とされているため、これから1年かけて200人を早急に養成し、現場で“実業”ができる「オン・ザ・ジョブ」の体制をいそぎつくろう。

    国有林においても、森林管理と仕事の専門家が少なくなっていることは同じである。国有林では100人を、「道づくり」の専門家らの指導も受けて早急に養成しよう。

.学校教育で、“森の心”“木の心”がわかる国民を育てよう

   日本国民一人一人が、子供の頃より、「日本の森林(もり)をどう生かすか」を考える知力を持つことができるよう、幼児期よりの教育を本年より始めよう。

   その舞台は、国民の足元にある各地の森林(もり)で、全国七つの林野庁の管理局が地元の各年代の学校教育者と協働してゆける仕組みづくりをしよう。

 

X.改革すべき制度や現状

1.温暖化防止対策として実施されている「森林吸収源対策」は、森林組合改革の推進をさまたげるので見直そう。

「森林再生」が、林業にとっては“低炭素社会構築”に貢献する唯一の道である。

しかし現行の温暖化防止策として実施されている「森林吸収源対策」は、実施する森林組合が「利益が出ない」との理由で伐採した材を林地に残してしまっていることや、1600億円弱と巨額なために、森林組合がその“公共事業”から抜け出せない体制をつくってしまっている。

「林業改革」を進めるうえではむしろ障害となっているので、ただちに見直すべきである。

 

 

2.  「皆伐」に法的規制を掛けよう

   近年「林業再生」の取り組みが進み、これまでは外材を使っていたハウスメーカー等による国産材利用が急増したために、列島各地の山が丸裸になっている現状が起こってしまっている。

 1ヘクタール以上もの皆伐は、「水土保全機能」が大きく損なわれることと、今つくりあげようと

している“林業システム”を否定する森づくりであり、ただちにやめさせるべきである。電力会社も

火力発電への木材利用を急激に増やしつつあるが、そこでも皆伐材が投入されていて問題だ。たとえ

民有林であっても、成熟途中の人工林を皆伐したり、伐採跡地を放置したりした場合には罰則が与え

られるような仕組みを、いそぎつくりあげる必要がある。

木材は今後、地球上でもわが国でも貴重な資源となり、高額となってゆくだろう。日本はその意味

でも前述の総理の下での「諮問委員会」で国家的戦略を考え、木材使用が常に計画的に行なわれるような法整備を進めてゆくべきである。

3.  日本の森林のあり方を、国民と林野庁が一緒になって考えよう。

1.   平成10年度に、3兆8千億円あった林野庁の赤字のうち2兆8千億円が国民負担で解消され、1兆円が残された。このため全国で森林管理署が解体され、林野庁には5千人の職員が残った。

しかし、これからの地域全体の森林管理のあり方を考えると、森林管理の専門家が現場に少なくなっていることは良くない。むしろ中央の職員は減らして、地元の森林管理署を復活、充実させ、全国で改革中である森林組合などと協働させるべきである。

2.   平成18年度の「行革推進法」の成立により、国有林の事業の一部は非公務員型の独立行政法人に移行することが決まり、それに向けての議論が進められてきたが、前項と同様に私たちはそれを抜本的に見直すべきと提言する。

国有林の管理は、林野庁やその国有林野事業部だけで考えるのではなく、地域地域の民有林所有者との密接な関係の下に、日本全土に“森林の多様な機能”を発揮させるために一体的な森林の配置や管理・施業計画をつくるべきものであるからだ。

「国有林問題」は、前述の総理直下のあらたな諮問委員会で議論することも含めて、日本全体の森林のグランドデザインを創考してゆく中で、国民と林野庁が一緒に考えてゆこう。

 そのうえで、国有林野事業部が世界にも誇れる仕事として、平成14年度より立松和平と共に行ってきた日本の木造文化を守るための「古事の森づくり」、すなわち「四百年の不伐の森づくり」を、四百年後には「巨木の国ニッポン」と世界から称賛されるような国になるための国民運動として広め、続けてゆこう。

3.   「大規模林業圏開発林道」などで国民の批判を浴び続けている「緑資源機構」は、水源林造成や大規模林道開発などを主要な事業に掲げてきたが、これらの事業が山村地域や流域の生活環境の向上に役割を果たしているとは見えない。その地域の住民とのやり取りなどを踏まえた「森づくりのビジョン」がなかったからである。“水源林造成”と称して広葉樹天然(生)林を伐って針葉樹人工林や針広混交林を造成したりしているのは、水土保全の本来の機能発揮の費用対効果からも得策とは言えない。大規模林道の開設にしても、その地域の林業の振興のビジョンと密接に絡み合ったものでなければならないのに、現状はそうではなかった。日本の森林のあり方とも絡めて、「緑資源機構」のなすべきことは何かを、森づくりの原点に立って考え直すべきである。