02 2002年7月14日  講演リストへ
緊急シンポジウム
  2002国際湿地シンポジウム・パート1
     −ラムサール会議に伝えたい日本の湿地再生− 
和洋女子大学  東館16階 第一会議室

8)長良川と「自然再生推進法案」についての危機感

 こんにちは天野です。

 まず長良川というのはですね、日本で最後までダムのなかった一級河川の2本の中の一本の川、もう一つは釧路川です。
そこに河口堰の工事が始まったのが1988年、1995年に河口堰が完成いたしまして、
ゲートが下ろされて、今年はまる7年経っています。

 私は、今日は長良川というよりも、自民党の方から自然再生推進法案が出るということに
私たちがどういうふうに対処するべきかというのを、川だけではなくて、川や湿地、
そして川の上流である森を含めて少しお話をします。
まず、スライドを皆さんに見ていただきたいと思います。
 これは大井川の上流です。大井川の上流では、ダムのために川にほとんど水がなくてこの辺では、
川は河原砂漠というふうにいわれています。14個もダムがあるので、こうやってダムに水ではなくて砂が溜まって、
そのために大井川では数十年の間に、漁獲高が3分の1になっています。昔は白砂青松といって、
白い砂と青い松が自慢だった海岸が、300メートルもなくなってしまいました。

 これはやっぱり静岡県ですけれども、天竜川の上流に、三峰(みぶ)川っていう川があって
その川の上流にある美和ダムは、ダム湖全体が砂で埋まっていてこのシャベルカーで砂をかい出してもかい出して、
かい出せないんです。天竜川もこうやって水ではなくて砂で埋まっています。
この川では1000メートルも海岸がなくなりました。

 これは黒部川で今、日本で初めてのダムからの排砂実験が行われています。
その排砂実験によってそれがヘドロになって漁師さんたちは収入がたった4分の1になっているというような状況です。
 これは長良川河口堰です。環境庁の絶滅危惧種であったサツキマスがいるということで有名だった長良川も、
このように河口堰が作られて、これは河口堰より下流ですけども、2メートル以上のヘドロがあります。
上流にもやっぱり2メートルのヘドロがあります。ダムというのはですね、こういうふうにヘドロを作り、
そして砂を止め、ということをやるわけです。夏になると長良川ではこんな不気味な泡がずっと溜まります。

 これはオランダが1970年から使ってきたハーリングフリート河口堰です。
 オランダは、この堰も含めてデルタプロジェクトというのをやりまして、
洪水を防ぐということをやろうとしたわけですけれども、1970年にこの堰をつくりましたら、
たちまちヘドロがたまり始めまして、オランダではこの堰以外の堰は、つくったけれども、
上げておくとか、それから年に数回だけ高潮のとき閉めるというふうなことが行われています。

 実は亡くなった諌早の山下弘文さんは、この現地に行きまして、
このゲートを上げることをオランダ政府が検討しているということを勉強してきました。
そして私に教えてくれました。そして私もここに2000年の6月に行きましたら、2000年の5月に、
この30年間使ってきたこのゲートが開くことが決まった(ゲートが上がるのは2005年・
すぐに上げられないのは、この7メートルもたまっているヘドロが科学的に危険だから)
ということをオランダ政府から教えられました。

 皆さんお手元に、「長良川ネットワーク」という新聞が加えてあります。
実はここに、このオランダのハーリングフリート河口堰の生態学者、
政府の生態学者がこの堰とオランダのデルタ計画に関わってきたが
もうこれをあげようとしているんだということを書かれています。
 山下さんが生きていれば、この人を日本に呼んだでしょう。
山下さんは亡くなりましたけれども、私は昨年、この人を日本に呼びまして、
オランダはもうこんなゲートをあげようとしているんだということを皆さんにお知らせしました。

 このハーリングフリート河口堰のところに溜まっているこれがヘドロの一部です。
こんなヘドロの山がライン川の河口部にいっぱいあるわけです。これがいわゆる湿地にたまっているわけですね。

 これはイサー川といいまして、ドイツの小さな都市に流れる川ですけれども、ここでは川の自然再生というのが行われています。

 これがライン川です。この水面がライン川で、ここに堤防がありますけれども、
堤防で川を抑え込むということがこの100年間ヨーロッパでも、アメリカでも、そして日本でも行われてきました。
しかし、アメリカでは1993年のミシッピ-川・ミズリー川の洪水で、ヨーロッパでは1993年、95年、97年の洪水で、
実は川をまっすぐにしたことがかえって洪水を大きくしたということが知られ始めました。
 すなわち川をまっすぐにして洪水を早く海へ運ぼうとしてまっすぐにすればするほど、
洪水が早く強く川のいちばん弱いところ、すなわち河口部に向かうものになって
河川局の人たちが計算した以上の洪水がきたときに大きな被害が起こって、欧米ではですね、
100年間まっすぐにしたことが間違ってたんだということが今、川の政策になりつつあります。

 それはどういうことかというと、ここにポンプがありまして洪水がこっちからきますと、
このポンプが開けられましてこっち側に水が入れられます。それがこの図です。
このさっきの堤防の中にこんなふうに水が入って、遊水地が蘇って多様な植物が蘇りました。

 これは水の入った森の向こうです。もともとこの土地は農民のものだったんですけども、
それを政府が買い上げて、そしてここを遊水地にして、もとの持ち主であった農民や市民に貸しています。
ここにはトウモロコシやライ麦などがありまして、水が一日や二日浸かっても大丈夫な食物が植えてあるので、
その洪水が去っていったときに、この作物たちの成長がいいということをドイツの農民が思い出したんですね。
最初は遊水地になんかにするのはいやだと言ってたんですけれども、
そういえば洪水が去ったあとに肥沃になるんだということを思い出したわけです。
これはアメリカの政府の高官がダムを破壊しているところです。いつも私がこれを見せますと、
日本の建設省(今は国土交通省)河川局の人が、「これ古いからもう壊しているんだよと。
天野さんはアメリカはダムを止めているとか、ダムが除けられてるって言うけれども、そんなことない、
古いからやめてるだけですよ」って言うんですが、違うんです。

 これはフーバーダムの上流にあるグレンキャニオンダムですけども、215メートルあります。
この215メートルのダムの撤去が今アメリカでは考えられています。1996年の3月に初めて、
このダムのゲートがあがったときに河原がどんなふうに復元していくかっていう実験が行なわれ、ずっと続いています。

 じつは、ゴアさんが大統領になっていたら、2001年1月にこのダムのゲートがあけられるというふうな
政府発表がされているところだったんですって。
まだこれは、まだ発表されていませんが、こういう大きなダムの撤去もアメリカでは考えられているということです。
2002年の12月までに500のダムがすでに撤去されています。
 実はこういうふうなことを私は1996年、2000年、2001年、2002年と、ヨーロッパやアメリカに行ったりしていて、
ここ数年、河川政策や公共事業政策が変わっているということを勉強してきました。

 その中で私や山下さんが、欧米の役人から教えられたことがあります。
それは彼らの国は100年間やってきた河川政策や公共事業政策、いわゆる20世紀の開発による自然破壊っていうのを
やりすぎたということを反省しているんですけども、私たちの国は情けないことに、環境庁もいちばん最後にできたし、
それから例えば、水俣病に対しても、薬害エイズに対しても、何でもそうですけども、
決して役人が自分たちのやってきた行政が間違っていたということを謝らないという国です。

 少なくとも私が自分の耳で聞いたアメリカやオランダやフランス、ドイツやオーストリア、
そういった国々の役人はみんな、自分たちが100年間やってきたことが間違っていたと。
あるいはやりすぎた、あるいは昔の科学では大丈夫だと思ったけれども、今は大丈夫でないことがわかったんで政策を変えます。

「これまでは一番うるさいと思ってきたNGOのお話を聞かせて下さい」ということを言ってるんですね。
それは、100年間のあやまちの解決法は、一番厳しいNGOの人達が持っていると知っているからなんです。

 日本はそういうことはいわない国、そういわない国の中で、今、自然再生推進法案が、よく議論もされないで、
あるいはNGOにもよく相談されないで進んでいっているという状況についてとっても危機感をもっていて、
7月7日に「長良川DAY」というのが長良川であったときに、辻敦夫さんに「山下さんが生きていたら怒りますよ」と言いました。
 辻さんは、環境庁(当時)に藤前干潟を守ってもらったので、小林光自然保護審議官に恩があり、この話に乗ってしまったのでしょう。
でも、これ、与党案なんです。政府案を環境省が説明されるんだったらいいんですけども、
与党案というものを環境省の小林さんがここに来て説明されたり、あるいはWWFがその環境省と一緒になって、
野党の議員のところを回っているということを聞きましたんで非常に心配しています。

 私は自分の耳で聞いたわけじゃありません、野党の議員さんが心配をして、
天野さん、WWFが根まわしをしているのはどういうことですかって言われたんで心配になって、
今日、大阪からきたというような状況なんです。
いずれにしても、日本の現状というのは、今さっきいろんな方々のお話にもありましたように、何度も言いますけれども、
まずは政府の反省があって、そして私たちも政府と一緒に、これまで私たちが100年間山河に対して何をしてきたかという
検証を一遍しないといけない。
 その検証なしの自然再生推進法案の提出というものについて、あるいは進んでいるということについて、
やっぱりどこかでもっと危機感をもたなければいけないというふうに思います。
私は、この与党からの自然再生とは、3度目の列島改造論(2度目は竹下サンの「ふるさと創生」)と思っています。
亀井静香さんと開発官庁の官僚たちの作品なんです。


TOPへ戻る