August 16, 2005 by Ted Inoue

1.情報タイトル:WhiteBalanceの原理と使い方、ツールの作成  

2.目的:

 デジタルカメラもとうとう銀塩カメラの販売台数を上回るご時世になってきました。その原因のひとつにフィルムが不要になった点が大きいと思います。しかしいまだに銀塩にこだわるカメラマンも多いのも事実です。ある人は「デジタルカメラは色がいまいち。チープで派手気味なのがいただけないヨ!」などとおっしゃっています。そんな人にお勧めしたいのが白紙を用いたホワイトバランス設定での撮影です。少し面倒ですが試みる価値があると考えて、原理を勉強しツールを作成しましたのでご紹介したいと思います。

3.Back Ground:

 今からちょうど2年前の 2003年夏、あきる野デジタルクラブでプレゼンをした原稿に少々手を加え、技術情報のライブラリーに載せる事にしました。

4.本題:
4−1.入門編:
4−1−1.ホワイトバランスとは:

  白い被写体(例えば白紙)を異なる光源のもとで写真を撮ると、白かったり、赤かったり、また青かったりと一定しない。光源が変わっても、白いものが正しく白い色で写される様にカメラを調整することを「ホワイトバランス」を取るという。

4−1−2.光源の変化:

  色温度が変わります。屋外と室内。屋外では晴天、曇り、雨など天候に左右されるもの。朝、夕方、日中など時間的。また場所的に晴天下、建物の影、木陰など。室内的には光源が白熱灯、蛍光灯などがあります。それぞれの光源で色温度は変わってきます。また光源は一つではありません。屋外の夜景のようにたくさんの光源がきらめき、また日中でも光の反射がありそれらが互いに影響しあうので単純にこの光源では何度などど色温度を言い当てることは困難です。

4−1−3.色温度(K):

 あらゆる波長の光を完全に吸収し、まったく光を反射しないものを「完全黒体」と呼ぶ。この完全黒体を高温に熱すると光を出すがその光の波長の長さとそのときの完全黒体の温度に一定の関係があると言われている。その完全黒体の温度(絶対温度・ケルビン)によって表現されるのが光の温度、つまり色温度という。 色温度が低い光は赤く、高くなるにつれて青みを増していく(「色温度とホワイトバランスの設定」参照)。

4−1−4.人間とカメラの違い:

 人には光源が変わっても、白いものは白い色と知覚する「色の恒常性」というものがある。カメラは人間のような知覚がないので、色あわせのためにホワイトバランスが開発され、装備された。

4−1−5.なぜホワイトバランスに白を使うのか?

  赤を使ってレッドバランスにしてもよさそうだが?太陽の光は本来連続した波長だが、人間の目はこれを赤・緑・青のセンサーで検知する。デジタルカメラのCCDも、原色フィルターを使っていれば赤・緑・青で色を検知し、この3色の組み合わせで様様な色を表現している。このRGBの大きさが等しいところに白があります。つまり白はR=G=Bの関係で成り立っています。白い色が白く見えないということは3原色の均等の関係が光源の条件で崩れることです。この3原色を均等になるよう補正するために白が使われている。つまり3原色が崩れている光源下で白いものが白く表現されるように補正をしてやれば、どんな色も被写体が持つ本来の色で表現できると考えた。

4−1−6.デジカメと銀塩(フィルムカメラ):

  デジカメにはホワイトバランスがあるのになぜ銀塩にはないのでしょうか?有りません。色を再現するには白バランスで調整する必要がありますが、銀塩カメラは「化学作用」を利用しているフィルムを使用しているので 一般ユーザがフィルムのホワイトバランスを操作する事は不可能です。ユーザーは色温度に合わせたフィルムを選ぶしかありません(例えばデーライトタイプ、タングステンタイプなど)。 これに比べデジカメは電気回路を使っているので、3原色のレベル操作は極めて簡単です。従ってデジカメは安価な製品にも簡単な白バランス機能を組み込み、ユーザが任意に設定出来る様になっています。

4−2.実際のホワイトバランス:

4−2−1.デジカメのホワイトバランスの機能の種類(キャノンEOS-1Dを例に取る):

  AWB(Auto White Balance)、太陽光、日陰、くもり、電球、蛍光灯、ストロボ、マニュアル、K (色温度数値・直接設定)、カスタムホワイトバランス、ホワイトバランスブラケティング、RAWデータの補正

4−2−2.AWBの選択と他の選択との使い分け:

  AWBはハード的には撮像素子と外部ホワイトバランス測光部を使用して行っている。この測光部がふさがれていたり、希望通りの撮影が出来ないとき他の設定を試みる。通常は他の設定は面倒なのでAWBを選びカメラ任せのホワイトバランスを用いている人が多い。

4−2−3.Kを選択した場合の特徴:

  カラーメータという測定器を使い色温度Kを測定する。得られた温度値をカメラに読み込ませて正確なホワイトバランスを行う。読み込ませることが出来る色温度範囲は2800〜10000Kで100Kステップで可能であるが、カラーメータは高価である。


4−2−4.マニュアルホワイトバランス(白紙を使用したホワイトバランス)の選択:

4−2−4−1.操作の仕方 :
    @色の基準となる白紙を撮影する
    Aこれをデジカメ内部で処理し 真の白色 になる
     R(赤)・G(緑)・B(青) の補正値を求める
    B以後これを補正値として 撮影データ を修正する
    C A〜B はデジカメ内部で自動的に処理される
    D詳細は個々のカメラマニュアル参照

4−2−4−2.特徴: 
 白紙を使うので安価である。光源があまり変わらない室内用には適しているが、時間で変わるような屋外ではいちいち白紙の撮影をする必要があり面倒だ。しかし被写体の色にかなり近い画像が得られる。

4−2−5.各社の「白紙を使用したホワイトバランス」機能の呼称:

  現在デジカメの製造会社で国内の主だったところ11社の製品を調べるとホワイトバランスに関連する機能の呼び方は同じだったり、異なったりとまちまちである。「白紙を用いたホワイトバランス」は高級機種には付いているが、ローエンドの製品には付いていない。下は各社の「白紙を用いたホワイトバランス」機能の呼び方の一覧表である。

会社名: オリンパス カシオ キャノン 三洋 ソニー
機能名: ワンタッチ マニュアル マニュアル ワンプッシュモード ワンプッシュ
 
会社名: 東芝 ニコン 富士フィルム ペンタックス コニカミノルタ
機能名: プリセット プリセット カスタム マニュアル カスタム設定
 
会社名: リコー        
機能名: ワンプッシュ(手動)        


4−3.ホワイトバランスの4つの機能を用いた被写体(造花)の撮影(○:白紙を撮影、●:被写体を撮影):

4−3−1.マニュアルホワイトバランス選択での被写体の撮影:

○4−3−1−1.電球照明下でマニュアルホワイトバランスの設定(白紙を使う)。
●4−3−1−1−1.マニュアルホワイトバランス選択で電球照明下の被写体を撮影(C)。
  4−3−1−1−2.マニュアルホワイトバランス選択で蛍光灯照明下の被写体を撮影。

○4−3−1−2.蛍光灯照明下でマニュアルホワイトバランスの設定(白紙を使う)。
  4−3−1−2−1.マニュアルホワイトバランス選択で電球照明下の被写体を撮影。
●4−3−1−2−2.マニュアルホワイトバランス選択で蛍光灯照明下の被写体を撮影(F)。

4−3−2.AWB選択での被写体の撮影:

●4−3−2−1.AWB選択で電球照明下の被写体を撮影(A)。
●4−3−2−2.AWB選択で蛍光灯照明下の被写体を撮影(D)。

4−3−3.電球選択での被写体の撮影:

●4−3−3−1.電球選択で電球照明下の被写体を撮影(B)。
  4−3−3−2.電球選択で蛍光灯照明下の被写体を撮影。

4−3−4.蛍光灯選択での被写体の撮影:

  4−3−4−1.蛍光灯選択で電球照明下の被写体を撮影。
●4−3−4−2.蛍光灯選択で蛍光灯照明下の被写体を撮影(E)。

4−3−5.被写体撮影画像の比較 上の4つの選択で撮影した6画像(A〜F)の比較:
  どの選択でホワイトバランスの効果が良く出ているか?各自で検討してみる。

4−3−6.結論:

 光源が電球照明のときの写真(A)の色は暖色傾向にある。光源が変わって蛍光灯になるとブルーの色傾向になる(D)。A、Dの色の間には大きな違いが有る。 ところがマニュアルホワイトバランス(白紙を用いる)で撮った写真CとFでは、光源が違っているのにかかわらず色は似通っています。またこの2つの写真が被写体に一番近い色です。 「白紙を用いたホワイトバランス」でないと、写真に正しい色を出すことは困難だ!!


[写真の比較]

電球照明下でのホワイトバランスの比較
 
蛍光灯照明下でのホワイトバランスの比較
<--×-->
[(A)電球下でAWB選択]
 
[(D)蛍光灯下でAWB選択]
<--△-->
[(B)電球下で電球選択]
 
[(E)蛍光灯下で蛍光灯選択]
<--○-->
[(C)電球下でMWB選択]
 
[(F)蛍光灯下でMWB選択]

4−4..ホワイトバランス用Toolの作成:

4−4−1.三脚用白紙ホルダー

 
[外観と使い方]
 
[パーツ一覧]

・作り方とセットアップの仕方:

 手持ちの望遠支柱を利用する。最初に10x16cm厚さ2cmの板を用意する。望遠支柱の2本のアームを開いた状態でアームの穴に合うように1cmの穴を2つ板に開ける。板の表側で2つの穴を2.5cm深さ2mmの穴に拡大し、太さ8mmの爪付きナットを打ち込む。板の下側に10x2.5cm角のプラスチックシートをセロテープで貼り付け紙のストッパーにする。板を望遠支柱に太さ8mm長さ2.5cmのヘッド付きネジで止める。板を取りつけた望遠支柱を三脚にセットする。板の表側にL判(89x127mm)サイズのインクジェット厚紙(つや無し、スーパーファイン)を置く。紙の両サイドを白いマグネット2個で押さえる。


4−4−2.携帯用白紙ターゲット

 
[完成外観]
 
[パーツ一覧]

・作り方:

 
アルミ製の折りたたみミラーを用意します。黒画用紙を切ってミラーが隠れるように貼り付けます。次に上で使用した白紙をミラーカバーの裏側に張ります。白紙の上部に蝶のシールを貼ってピントが取れるようにします。