第四章                      巡礼・遍路から得られるもの

1、   健康面より見た巡礼・遍路の効能

T・歩く効能(医学的見地より)

第一:心肺機能の向上

血の巡りを良くし心肺機能が向上し疲れがとれやすくなる。

第二:抗重力筋が鍛えられる。

脚の筋肉が鍛えられポンプ機能を向上させ心臓への送る機能を増加させ心臓の負担を軽くする。(心筋梗塞の予防)

第三:消化吸収力の向上

         胃腸の活動を活発にします

第四:酸素不足を補い脳機能の鈍化を防ぐ(ボケ防止)

U・日光浴の効能

骨を健康に保つビタミンを作る効果もあります。

V・森林浴の効能

自然界、特に森林の中で植物が発散している「フィトンチッド」という物質の存在は、古くから知られていました。生鮮品を針葉樹の葉にのせて運搬したり、鮮魚を長屋で売り歩く姿は時代劇でも見られます。また森林の国フィンランドでは、サウナに入り白樺の葉で体をたたいて血行を良くするそうです。

W・心の癒し(精神)の効能

 @、巡礼でボケ封じは出来るのか

 巡礼でボケ封じ、という発想は古い。そもそも巡礼は傷病や身体障害の快方祈願から始められ、多くの霊験談を生み出してきた。他人に迷惑をかけずに死ぬまで丈夫でいたいと願う「ボケ封じ」も、古くからの願意の1つであり、かっては「中風除け」「ポックリ」「コロリ」「裾よけ」「下の世話にならない」「嫁入らず」などと表現された。

 中風除けを祈願する社日の「七社七鳥居参り」は古くから全国的に見られた民俗であるが、高齢化が社会問題化した1980年代後半からは新たにボケ封じを祈念する巡礼コースが相次いで開設された。

 今熊野観音寺(京都市東山区)から鎮国寺(福岡県玄海町)に至る「ボケ封じ33観音霊場」(1984年)や「ボケ封じ富士見楽寿観音霊場」(1985年)「近畿楽寿33観音霊場」(1989年)をはじめとして、関東・山口・四国・北陸・東海・京都など、「ボケ封じ」や「白寿」を名前に含む33観音霊場が巡礼者を集めるようになったのである。

 巡礼による「ボケ封じ」はもはや迷信や呪術として切り捨てるわけにはいかなく成ってきているのである。伝統的に受け継がれてきた巡礼文化の知恵を活用しない手はないだろう。

A、巡礼は健康のためになるか

 近年の脳神経研究の目覚しい進展により、巡礼などで得られる「いやし」効果が、セトロニンの分泌を促して脳細胞を新しく発生させることが明らかになっている。

 都会の雑踏を離れ、森林浴をしながら鄙の風景を愛で、清浄なる神社・寺院を巡る旅は、心の癒しをもたらす日本古来の伝統的な文化装置である。巡礼で痴呆の症状が改善したり、精神状態が好転することは、充分考えられるのである。

 巡礼には心の健康だけでなく、肉体的健康を促す装置も組み込まれている。読経の複式発声や自分の足で歩くウォーキングは成長ホルモンを分泌し、循環器系統を若返らせて身体年齢を若くし、脳梗塞や脳血栓を予防する。札所の参道は階段が多く、境内を巡拝するだけで相当な有酸素運動と筋力増強運動になる。歩き遍路なら絶大な効果が期待できる。

 実際、軍国思想全盛の戦前には体力増強・精神修養の手段として四国遍路や皇陵参拝などの巡礼が盛んに奨励されていた。巡礼は他の旅に比して日常の雑事・雑念から解放される度合いが強く、「よく動き・よく食べ・よく眠る」を実現しやすい。巡礼で健康にならない方がおかしいくらいである。

 こうした物理的な作用に加え、巡礼特有の信念が加味されれば、免疫力・自然治癒力の向上と相乗効果をなして劇的な変化が生じる可能性も充分考えられることでしょう。

 ある四国のお寺の住職は巡礼路を自然遊歩道として整備してそこにたまたま札所があるという姿を提唱している。伝統文化として受け継がれてきた「巡礼」いうシステムがもつ可能性は計り知れないものがあり自然と人間が手を携えて地域から人間を活性化する巡礼の効能を活用してこそ、新しい日本の未来は開けるのではないだろうか。

 又、何人かで仲間を作り一緒に巡礼すればお互いに迷惑はかけられないと励ましあい助け合って健康的にも精神的にも向上心がつくのは間違いない事実となるものと思われます。