「実験兵器」
一機の旅客機が大空を、飛行している
「ポーン」と機内に音が響き渡ると、続けてアナウスが入った
スチュワーデス:当機は一時間後に、ロサンゼルス国際空港に到着致します
スチュワーデス:当地の天候は晴れ、到着予定時間に変更はございません
スチュワーデス:到着予定は現地時間、16:32分です
一人の女性が、窓を眺めながら座っている
あや:ふー・・・
ちょっとため息をつくと、ヘッドホンを外し
毛布の掛かっている膝に置いた
あや:父さんにも困ったものね・・あんまり娘をあてにしないでほしいわ・・
隣に座っていた、男性がちらっと、あやの方を向く
考え事を、思わず口に出していることに気が付いたあやは
再び、ヘッドホンを付け直した
フェイザー軍地上基地
格納庫から滑走路へ、シャトルがゆっくりと出てくる
管制室には、司令官と数名のオペレータが残っていた
オペレーター1:まもなく、発進位置です
メインモニターにシャトルが映し出される、その向こう側に
戦闘と思われる光も見えた
司令官:一番機、その場で待機
司令官は、シャトルの映っているモニターちらっと見ると
オペレーターの方を向いた、オペレーターは自分の画面を
見つめたまま、報告する
オペレーター1:カタパルト接続中・・・接続確認・・一番機発進OKです!
司令官:聞こえたな?・・秒読みを開始する、各自発進に備えよ
司令官は再びモニターに目を移す、シャトル一番艦はエンジンを
スタートさせたようだ、「ヒーン」と甲高い音が聞こえてくる
オペレーター2:カウントダウンスタート・・10・9・8
司令官:いいか、キールの艦がいるはずだが、まず兵装のある
司令官:きさまらを一番艦にした意味を忘れるなよ
司令官:・・健闘を祈る・・
オペレーター2:2・1・発進!
大型のカタパルトで加速されたシャトルは、一気に上昇して行く
司令官:よし、続いて二番艦用意!
空中戦の戦場
一機のライトフライヤーがナイトメアに後ろを取られた
隊長機に悲鳴にも似た、通信が入る
部下1:だめです、振り切れません!
隊長:ばかやろー!、オートに頼るからだ!
隊長の下方からの攻撃を、上昇で避けるナイトメア
隊長:なんの為のマニュアルモードだ!さっさと切り替えろ!
部下1:・・は!
隊長機から9時の方向に、上昇して行く光が見えた
隊長:・・やっと1機か・・
フェイザー艦隊
ミカエル旗艦艦隊からミカエルとほぼ同型の大型艦が、前に出て行く
旗艦オペレーター:ルシフェル、作戦開始の指示はまだ出ていない
旗艦オペレーター:繰り返します、キール司令、作戦開始の指示は出ていません
フェイザー軍旗艦「ミカエル」
バージ:・・・よい・・好きにさせよ
バージ:・・・我が艦も発進準備に入れ!・・・
バージは吐きすてるように言った
フェイザー軍大型艦「ルシフェル」
当然、ミカエルからの通信は入っていたが、ブリッジの乗組員達は聞こえて
いないかのように、自分達の持ち場をこなしている
そこには、ユリの姿もあった
キール:地上の様子は分るか
ユリ:はい・・あ!
ユリは嬉しそうにレーダーを見つめると、メインモニターに切り替えた
ユリ:上昇中の機影を確認・・敵艦に動きは・・ありません・・
ユリがホッとしたような口調に変わる
ユリ:まもなく高度400で予定周回軌道に入ります
キール:こちらの合流ポイントまでは?
ユリ:はい・・・敵射程圏外を通過しても、ランデブーに問題ありません
メインモニターに予定進路が表示される、キールはモニターを見つめながら
考え事をしているようであったが、組んでいた腕を離すと自分の席に付いた
キール:よし、進路固定、合流ポイントへ向かう
フェイザー軍地上基地
シャトル三番機が、格納庫から出てくる
通信席に付いた司令は、ヘッドホンを装着するとスイッチを操作した
司令:シャトルから隊長機へ・・聞こえてるな
隊長機から、忙しそうな返事が返ってくる
隊長機無線:聞こえております!
司令:よし、いいか、当艦が通常発進の後、基地上空へ逃げ込め
司令:基地兵器の対空攻撃中に合流されたし、以上だ!
隊長機無線:了解!
やっとかと言いたい感じの返事が、入ってきた
空中戦の戦場
レーダーでシャトルの発進を確認した隊長はチラッと基地の方向を向く
そこへ一機のナイトメアが横合いから突っ込んでくる
隊長:なろ!
上昇反転で避けると後ろについた、すばやく発射された攻撃はナイトメアに
命中した
隊長:っへ!
被弾したナイトメアを蹴り上げるように、人影が離れ飛び去る
隊長:あ、くそ!きったねーな・・
そうつぶやくと、気を取り直したように告げた
隊長:・・・シャトルの発進を確認した、長居は無用だ
隊長:全機基地上空まで退避、気を抜くなよ
各ライトフライヤーは、思い思いの方向にバラバラに飛行すると
ナイトメア達は一瞬混乱した、その瞬間ライトフライヤー達は
一斉に基地方向に飛び去って行った
ノイド軍旗艦「ロイヤル」
シートに座っているシータが、ゆっくりと目を開ける
シータ:ふん・・やっと、動いたか・・・
シータ:しかし、たったの一艦だと・・なにをする気だ・・
そう、つぶやくと少し間をおいて、オペレーターに命令する
シータ:別働隊の集結状況を知らせよ
オペレーター:第3及び第5艦隊に若干の遅れ・・・集結率80%です
オペレーター:・・オーラより警告・・
オペレーター:周回軌道に敵機、15分後に射程圏内に入ります
それを聞いた、シータは再び目を閉じた
シータ:ふん・・そっちは放っておけ・・
シータ:第1及び第2艦隊へ、情報伝達
シータ:別行動の敵艦への有効射程軌道に入れ
シャトル三番機
ライトフライヤーが基地上空を通過すると、基地の対空攻撃が開始された
司令:始まったな・・下部ハッチ開放!
操縦士:開放します
ライトフライヤー達がシャトルの下方から近づいてくる
隊長無線:相対速度確認、着艦する
操縦士:了解
空中収容用のクレーンで一機、また一機とライトフライヤーが着艦していく
基地上空では、ナイトメア達が攻撃を避けながら無人となった基地を次々と破壊
していった、その内の一機のナイトメアがシャトルに気がつくと向かってきた
司令:お客さんにきずかれたぞ!
操縦士:収容完了、ハッチ閉じます
司令:よし、上昇しろ、追いつかれる前にブースター点火だ
操縦士:は!
シャトルは、徐々に速度を上げながら上昇して行く
操縦士:主翼収納します、ブースター点火5秒前
司令:各自対応姿勢をとれ!
操縦士:2、1点火
ブースターによって、一気に高度を上げていくシャトルに、ナイトメア
が、苦し紛れに攻撃するも、当たることは無かった
フェイザー軍旗艦「ミカエル」
ミカエルはルシフェルと同じ軌道を進んでいた
バージのパネルには、すでに準備完了の文字が点滅している
オペレーター:艦隊、予定軌道へ移動を開始しました
オペレーター:こちらの行動をルシフェルに伝達します
バージ:その必要はない・・進路変更、最大出力・・
オペレーター:こ、これでは、ルシフェルと合流できませんが
バージは当然と言った感じで、予定進路の表示されたモニターを見る
バージ:・・・あれは、よいおとりとなるだろう・・
そう、つぶやくと、次ははっきりした口調で命令を出した
バージ:我が艦は軌道上にて「E・W・P」を散布し、艦隊への合流進路を取る
バージ:・・どうした・・命令は一度しかせぬぞ・・
オペレーター:・・・は
ミカエルは、バーニアを吹かし進路を変えていった
フェイザー軍大型艦「ルシフェル」
ユリ:まもなく、合流ポイントです
キール:よし、高度維持!シャトルを待つ、監視もおこたるな
ユリ:はい!
ノイド軍旗艦「ロイヤル」
オペレーター:敵艦隊の移動探知、こちらの索的範囲外へ進路を取っております
シータ:・・よい・・追う必要はない・・艦隊の集結を急げ
そう告げると、また目を閉じた
フェイザー軍旗艦「ミカエル」
ルシフェルより、奥の軌道に乗ったミカエルは、ロイド艦隊と惑星を挟んで
裏側に回っていった、モニターからルシフェルの姿が消える
そのモニターを見ていたオペレ−ターはギュッと目を閉じた
オペレーター:バ、バージ様・・発射地点です・・
苦しそうに、報告する
バージ:うむ・・機械どもに相応しい死を与えてやろう・・
パネル横のスイッチのカバーが開く
バージは無言で、そのスイッチを押した
ミカエルの先端部分が、左右に開くと
そこから、キラキラと輝いたなにかが、発射された
シャトル3番機
上昇中のGに耐えながら、操縦士は外の異変に気づく
操縦士:こ、これが・・「E・W・P」・・・し、司令!
ミカエルのモニターには、惑星に光のカバーが段々と広がっていくのが映っていた
もし、地上に居る者達に感情があるなら、こう報告したかもしれない
空が、七色に染まっていきますと・・