「農薬問題と有機農法」

日本の自殺者の数は1998年から毎年3万人を超えている。特に新潟県は農村部ににおける高齢者の自殺率が非常に高い。第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『自殺大国に潜む影…』(制作:新潟総合テレビ)で「自殺と農薬の問題」詳しく取りあげていた。端的にいえば、農薬として使われる有機リンの慢性中毒が「うつ」の症状を生み自殺に繋がるというものだ。 実際、ケープタウン大学のロンドン教授たちは2005年に『自殺と有機リン系殺虫剤への曝露』と題する論文で、低レベルの有機リン系農薬を長期間浴びると、「うつ」を発症し、自殺を引き起こす恐れがあると発表した。その他、様々な国の研究機関や研究者のなかでも「有機リン化合物の慢性中毒」が「うつ」を引き起こすことは確認されているようだ。
さらに、20年以上前から農薬や化学物質による体調不良を訴える患者を治療してきた、青山美子医師は、特にラジコンヘリによる「有機リン系農薬」の空中散布に注目した。風向きによって同じ地域から「うつ」を持った患者が、治療に訪れる。たぶん、ラジコンでの空中散布は操縦技術だけあれば、農薬をまくという感覚無く楽しく比較的気楽に作業ができてしまう。そこで、農薬の危険性などを考えず油断して必要最小限より多くの農薬を散布してしまう可能性を生む。 平久美子医師(東京女子医大)によれば、無人ヘリコプターによる空中散布が行われる地域では異常な心電図が多く見られ、特に散布の時期には心臓マヒにつながりかねない異常が数多く見つかるという。

厚生労働省や農林水産省は、有機リン慢性中毒の危険性を認識しながら、有機リン化合物に対する規制策をとってはいないのは、農民や庶民の事よりも、農協や業者の方向
を向いた行政を行っているということであろう。

しかしながら、私は今はやりの完全有機農業や完全無農薬での栽培がいいとは思わない。実際には、農薬の有効性と危険性をよく理解して上手に使う智恵が必要だ。この場合、科学的に物事を考えるというのは、自然の浄化の範囲や人間の健康・寿命、経済効率などへの影響を総合的に考えるということになる。まさに「原子力発電」などと同じ環境問題である。重要なことは、人間の物事への考え方の転換や歴史的事象から学ぶことや「生物的直感」だと思う。
(2006.11/2007.06改)

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