包丁にナイフにハサミ……。日々の暮らしで活躍する刃物は、研げば何度でも鋭い切れ味を回復させることができる。しかし、最近は低価格の商品が多く出回り、切れ味が鈍れば、すぐに買い替えてしまう向きも多い。砥石を使ったことがない人も珍しくないだろう。新しい刃物の登場で引退を余儀なくされるすり減った刃物にも、感謝の気持ちを忘れず、その行く末を気をかけたいものだ。
刃物産地である岐阜県関市の刃物産業連合会は、こんな思いに応えようと五年前から刃物のリサイクルに取り組んでいる。北海道から九州まで全国の刃物店やスーパー約千店に協力してもらい、店頭に専用の回収箱を設置。家庭で不要になった刃物を販売店がまとめて送る。
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連合会で鋼、ステンレスなど金属の種類ごとに分別された後、お隣の愛知県内の鉄鋼メーカーで新しい鋼材に生まれ変わる。一部はまた刃物に加工され、二度目の奉公に出る。
昨年集まった刃物は約二万一千本。毎年十一月八日の「刃物の日」には、集まった刃物を供養している。リサイクルに出される包丁には、何度も研ぎ直して使ったため、細長くすり減っているものも多く、長く付き合った刃物を簡単には捨てられないという愛着が伝わってくるという。
連合会のホームページ(http://www.seki-japan.com/)では、回収店の一覧を掲載している。世話になった刃物を大切にする心を忘れなければ、意気に感じた包丁が切れ味を増し、料理の味もよりやさしいものになるはずだ。 |